京都大学 都市社会工学専攻藤井研究室

京都大学大学院工学研究科 都市社会工学専攻
交通マネジメント工学講座 交通行動システム分野

藤井聡:「増税」するのが「消費税」だなんてあり得ない!

日刊ゲンダイ,2012.7.27

日本経済の「虚」と「実」~新聞報道に騙されるな!~④

「増税」するのが「消費税」だなんてあり得ない! 

京都大学大学院教授 藤井聡

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「消費税増税」を巡る議論の中には,様々な(そら)事,すなわち「ウソ話」が含まれている.中でも,次のウソ話は,国民にとっては特に許し難いものだと思う.

「増税するなら,消費税が一番いいんです!」

そもそも,デフレ不況下では「増税」そのものが基本的に論外ではあるのだが,仮にそれを不問に付すとしても,増税のターゲットを「消費税」にするということは全くもって許し難い話だ.

そもそも,消費税がターゲットにされる表向きの最大の論拠は,それが「安定財源」だからだ.社会保障費は安定的に伸びていくのだから,安定的に税収が得られる消費税が望ましい,というわけだ.

確かに,消費税は安定財源だが,これつまり,消費税が「景気が良くても悪くても安定的」に得られる税金だということを意味している.これは税を「取り立てる側」にしてみれば有り難い話だが,「払う側」の国民にしてみればたまったものではない.

例えば5%の消費税増税を考えるとするなら,その5%は,好景気時には国民に深刻な被害をもたらすとは考え難い(むしろ,過剰なインフレになりそうな時には,その抑制のために消費税増税が「得策」となるケースも考えられるくらいだ).しかし,不景気の時には,余裕が無くなった庶民にとってはたった5%と言えども極端に「実質的な負担感」が大きくなる.

一方,増税の際に消費税をターゲットにするということは,消費者「以外」の人々は増税を「免れた」事を意味している.誰が増税を免れたのかと言えば,第一に挙げられるのが「法人」だ.とりわけ,近年巨額の内部留保を積み上げ続けている「大企業」こそが大きく増税を免れることとなる.加えて,所得や資産からの増税を免れた高額所得者や資産家等の「富裕層」も増税を「免れた」と言えよう.

つまり,増税の際に消費税をターゲットにするということは,「弱者」が大半を占める消費者に対して「増税」する一方で,大量の金融資産を所持する「強者」である大企業や富裕層は相対的に「免税」されるのである.

そもそもデフレ不況は格差の拡大をもたらし続けてきた.そんな中,消費税の増税なぞを敢行すれば,デフレによって生み出された格差をさらに過激に促進し,デフレ不況をより深刻化させることは必定なのだ.

すなわち,どこをどう考えても,民を慮る為政者がいるとするなら,彼にとってはデフレによって生み出された大量の弱者をさらに弱者化せしめんとする消費税増税などは,万に一つもあり得ぬ選択なのである.