橋梁新聞（８月２１日号）

（※　法政大学の五十嵐敬喜教授との両論併記記事）

 

亡国を回避するために，国民は正気を取り戻すべし

 

京都大学大学院教授　藤井聡

 

鎌倉時代の吉田兼好が徒然草の中で書き連ねたように，世間は驚くほどに多くの「虚(そら)事(ごと)」（ウソ話）に満ちています．当然ながらマスディアが凄まじく発達した現代もまた，数々の虚(そら)事(ごと)に塗れています．そんな現代の数々の虚(そら)事(ごと)の中の代表的なものの一つが「公共事業悪玉論」でした．その要諦は「公共事業の問題を指摘し，それを理由にその縮小を主張する」というもの．その圧倒的な影響力は，政局我が国の公共事業を半分以下にまで縮小させる程のものでした．しかし必要性を十分に吟味せずに闇雲に事業縮小していく姿勢は，良識的判断から見れば「狂気の沙汰」の誹りを免れ得ないものでした．しかし今俄に始められた巨大地震による亡国の危機を見据えた国土強靱化の議論は，そんな狂気の中から正気を取り戻す契機となり得るものです．日本国民が正気を取り戻し「備えあれば憂い無し」の未来を確実に手に入れんことを，心から祈念したいと思います．