地方を破壊する維新八策の消費税政策

日刊ゲンダイ,2012.9.15

日本経済の「虚」と「実」~新聞報道に騙されるな!~⑪

『地方を破壊する維新八策の消費税政策』

 

京都大学大学院教授 藤井聡


本連載ではこれまで「消費税増税」を巡る新聞報道の「虚と実」を論じてきたが、その間俄に、橋下大阪市長の「維新の会」の国政進出が新聞紙面を賑わすようになってきた。そして先日彼等は「維新八策」なる綱領として公表している。

 

詳細な政策議論に必ずしも明るくはない多くの国民は、この維新八策がどういうものであるのかを適切に評価できないのが実情だ。もちろん、間接民主制を採用している我が国ではその実情は必ずしも憂うべきものでは無い───とも言えるのだが、これだけ大々な報道内容について国民が「無知」のままであれば、真っ当な選挙など望むべくもない。つまりは国民がその綱領にここまで注目している以上は、その内容を出来るだけ正確に理解する「義務」が国民に発生してしまっていわけだ。ついては本連載ではしばらく、主として経済的な側面に関わる方面から彼等の政策方針を巡る虚と実を明らかにしていきたいと思う。

───八策における主要項目の中には、本書で論じてきた「消費税」についての項目がある。これは、地方分権を標榜する彼等の綱領の中でもとりわけ重要なもので、消費税を全て地方消費税化するというものである。

この主張は一見「中央の財務省が貧乏になり地方政府が豊かになる、結果、国民が得をする」かの様なイメージを喚起するかも知れない(実際、その様な解説をテレビで見た事がある)。しかしそのイメージは完全なる錯覚あるいは虚構であり、実際には地域間の格差が拡大し、地方の疲弊は決定的になることは火を見るよりも明らかなのだ。

そもそも国税は、全国各地に使われる。

一方で、地方税はその地方に「しか」使われない。

したがって、税金が地方税化されれば「大阪」を含めた大都会では税金が増え、人口の少ない大多数の地方の税金は激減する。

ただでさえ地域間格差が問題になっている所に地方税化が進められれば、その地域間格差はさらに拡大し、「シャッター街」に象徴される地方の疲弊は決定的となる。つまり地方税化という方針は、(大阪を含めた)「田舎に回っているカネを、都会者がむしり取る」という構造を明確に持っているのだ。

筆者は一人でも多くの国民に、冷静に考えればすぐに透けて見えるこの自明の構造を、是非ともご理解いただきたいと思う。地方の方々は言うにおよばず、日本全体を慮る都会の方々ですら、その構造には一定の「嫌悪」の念を抱くのではないかと、筆者は思うのである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です