公共政策のための物語研究WS
2023.07.05
公共政策のための物語研究ワークショップ
公共政策における物語研究ワークショップ 趣意書 (設立趣旨)
近年の土木計画,都市計画,さらには,交通政策や経済政策などの様々な「公共政策」において「合理性」は大いに尊重されてきた.
例えば交通計画においては,交通量をより正確に予測し,それを踏まえて合理的に交通網計画をたてるというアプローチが,近現代
の交通計画の根幹に位置する考え方であった.しかし近年,人々の主体的参加を前提とするまちづくりや,人々の意識や行動の変容
を図る施策などの,必ずしも数理的予測を根幹に据えた合理的計画論の考え方では捉えきれない実務が,公共政策の現場にて実施
されつつある.こうした流れを公共政策論の中に的確に位置づけつつ,かつ,それを踏まえて現状の公共政策の改善を目指すためは,
合理性とは異なる新しい計画原理の導入が必要である.
ついては本研究WSでは,
1) 「合理性」に変わる計画原理としての「物語」の可能性を探る議論と研究,ならびに,
2) 「物語」を踏まえた様々な実務実践の展開を促す「実践研究」
の双方を展開するものである.
(研究テーマ例)
合意形成やPI,MMやリスクコミュニケーションといった人間の行為が深く関わる社会的計画論ではいずれも「物語」が重要な役割を
担い得る.そうした諸問題における物語の役割を,民俗学や解釈学等の人文社会科学を援用しつつ研究し,その上でそうした学術的
解釈を踏まえた「実践」を図る.具体的には,例えば次のようなテーマが考えられる.
◆「基本構想」と物語
実施計画,基本計画の上位概念として措定される「基本構想」における「物語」の役割についての研究と,それを踏まえた基本構想の
策定の実践.
◆「まちづくり」と物語
多くの公衆の参画を前提とするまちづくりにおいて,そのまちの歴史という「物語」,その歴史における「まちづくり」という人々の「物語」
の果たす役割についての研究と,それを踏まえた「まちづくり」の実践.
◆「地域愛着」「ナショナリズム」と物語
住民,国民の合意の下で推進する都市計画や国土計画において,一人一人の地域愛着やナショナリズムは極めて重要な要素である
一方,それらは地域や国家に関わる物語と大きく関わる.地縁に関わる物語性の心的,公共的意義を理論的,実証的,実践的に探る.
◆政策普及と物語
LRTやMM等の新しい施策の社会的普及において,それにまつわる「物語性」は大きな役割を担う.その社会的普及を明らかにすると
共に,それを踏まえたその普及実践を進める.
◆計画主体の推進力と物語
例えば,土木関連の組織においてなら,「土木という物語」の理解は,組織的凝集性,ならびに構成員の士気や主体性に大きな影響を
及ぼす.同様に,全ての計画主体の推進力は,それに関わる「物語」に大きく影響を受ける.その過程についての基礎的,実践的研究
を進める. 等
代表: 藤井 聡 (京都大学大学院 工学研究科 都市社会工学専攻 教授)
◇活動実績(2011.03 現在)◇
◆第一回 公共政策における物語研究ワークショップ開催 配布資料
◆第二回 公共政策における物語研究ワークショップ開催 配布資料 New
◇登録メンバー(2011.03 現在)◇
◆神田佑亮:(株)オリエンタルコンサルタンツ/広島大学大学院国際協力研究科博士課程後期
◆酒井 弘:(株)まち創生研究所
◆佐々木葉:早稲田大学創造理工学部社会環境工学科
◆柴山桂太:滋賀大学経済学部社会システム学科
◆鈴木春菜:山口大学大学院理工学研究科システム設計工学系学域(工学)社会基盤工学分野
◆竹村和久:早稲田大学文学部心理学教室
◆谷口綾子:筑波大学システム情報工学研究室リスク工学専攻
◆中野剛志:京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻
◆中山晶一朗:金沢大学環境デザイン学系
◆羽鳥剛史:東京工業大学大学院理工学研究科土木工学専攻
◆花岡伸也:東京工業大学 大学院理工学研究科 国際開発工学専攻
◆原口征人:社団法人 北海道開発技術センター 企画部
◆藤井 聡:京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻
◆松村暢彦:大阪大学大学院工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻
◆森山昌幸:(株)バイタルリード
◆山下裕作:国立大学法人熊本大学大学院社会文化科学研究科
◆矢守克也:京都大学防災研究所巨大災害研究センター
◆吉永明弘:千葉大学大学院人文社会科学研究科
(五十音順)