『大阪都構想』の危険性に関する学者所見

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『大阪都構想』の危険性に関する学者所見
(5月6日時現在、計105人分)

■ 記者会見出席者(18名) からの所見 ■

小野田正利 (大阪大学・教授) 教育学
2012年3月に維新の会が中心となって成立させた「教育基本条例」以後、大阪の教育は危機的状況に直面している。目の前の課題に黙々と取り組んできた優秀な教師たちが大阪を離れていった。残った教師・新しく教師たちは、踏ん張りながらも疲弊の局地にあり、子ども達は「学力テスト」の点数向上のための道具になり、学校から躍動感が失われつつある。大阪都になれば、政令指定都市として有していた独自財源の多くが府=都に吸い上げられる中で、政令指定都市が有していた優秀な教員確保のための採用や研修の権限は喪失し(「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第58条)、同時に学校設置運営に関わる学校の条件整備はより劣化し貧弱になっていくことは明確である。
これに加えてカジノ設置へとつながる構想は、保護者たちの養育意識と生活基盤の確保に深刻な悪影響を与え続けることになる。

柏原 誠 (大阪経済大学・准教授) 政治学・地方自治
大阪市を廃止し5つの特別区に分割するということは,市民として存在をなくすことを自ら決定するわけだから,自治体・市民にとって文字通り究極かつ,結論によっては最終の決断になる。さらに,有権者は大規模で,拘束力があり,実質的に不可逆な決定は,未来世代も拘束し,特別区移行手続きでは隣接市の意思決定過程にも影響をするきわめて重大な決定が課せられている。一方,振り返ってみれば,これは,市議会での審議の末,一旦は議会が否決したものを,大阪市内外の政治の動きによって住民投票を実施することになったものであり,議会の役割を改めて問う必要が生じるとともに,市民にこの問題の分かりにくさを一層感じさせ,大きな負荷をかけることとなった。
他方,市民の疑問を解消し,質の高い市民意思の表明のための条件となるべき住民説明会は,「催眠商法」と揶揄されるほど,賛成誘導に偏した,法の規定にある「わかりやすい説明」とはほど遠い内容のものとなっている。そもそも,特別区協定書に書かれた内容は,自治体の再編成と権限・財源・資産・負債の再配分であり,市民の関心である公共政策や市民生活への影響についての情報はほとんど含まれていない。
これらの状況から5月17日の投票については,その賛否の結果のもつ効果は等しいものではなく,賛成の結論が出た場合にはるかに重大な効果を持ちうることに鑑みて,対案やその後の議論を考える時間を生み出し,より高い水準の市民的合意を得るためには、本投票で特別区設置が否決されることが合理的であると考えざるを得ない。

河田恵昭 (京都大学・名誉教授) 防災学
「防災・減災に未熟な大阪都構想」 防災・減災は選挙の票につながらないと素人政治家は判断し、今回の大阪都構想における大阪市の区割りや大阪府との役割分担において、防災・減災は全く考慮されていない。しかし、南海トラフ巨大地震は今にも起きかねないほど危険である。それだけでなく、もし谷町筋に沿って南北に走る上町断層帯地震が起これば、現状では、大阪市だけでなく大阪府全域が壊滅する。市民の安全・安心を守るのは大阪市行政の最重要課題であるにもかかわらず、票につながらないから大阪都構想では全く触れられていない。地震と津波で大阪市営地下鉄や水道が壊滅すれば、大阪市の繁栄どころか、津波や火災で多くの市民が犠牲となり、復旧・復興もままならず、これが致命傷となり大阪市はさらに没落する。民営化の前にもっと地下鉄と水道をはじめ、社会インフラの防災対策を進めなければならない。地震に無防備だった首都カトマンズを襲った4月25日の地震は、その教訓であろう。

北山俊哉 (関西学院大学・教授) 行政学・地方自治論
大阪都構想は、大阪市を複雑骨折させて5つにバラし、市が徴収していた固定資産税、法人住民税等を大阪府に差し出して、都市計画を任せしてしまうものです。23区が都の7割を占める東京と違い、大阪市は府の3割しかなく、都市計画がうまく進むとは思えません。しかも府は2人の維新知事の下で起債許可団体になってしまい金欠です。道頓堀プールと同じように論外、お話になりません。プールも資金繰りや調整が難航して頓挫しましたが、特別区も資金繰りに苦しみ、他区、一部事務組合、府との調整が難航すること必至です。最後に、橋下徹氏が詐欺的なセリフやグラフを使い続けていることも大問題です。行政学や地方自治論の前提において何よりも重要な「コモンセンス」の視点から考えて、「まったく信用できない、うさん臭い人物」といわざるを得ないと考えます。

木村 收 (阪南大学・元教授) 地方財政学
大阪市は126年の歩みのなかで形成された有機的総合行政体。市を解体し、5特別区と前例のないマンモス一部事務組合に分割することは生木を裂くに等しく、大都市の活力をそぎ、長期低迷を生む(合併のタシ算に対して、廃止・分割は前例のない難しいワリ算)。
協定書の内容は、地方自治法による基礎自治体重視の役割分担や地方分権の流れに逆行し、大阪の地域性を無視した都区制度もどきの広域自治体(府)への集権体制が特徴。なぜ美術館・消防・・・等々を市ではなく府が担わなければならないのか、すべて説得力のある説明がない。
財政自治なくして特別区の自治はない。

小林宏至 (大阪府立大学・名誉教授) 農業経済学
公立大学に対する国の支援システムを活用した大阪府及び大阪市のこれまでの大学運営は、東京都の約4分の1の純経費で、1.9倍の学生に大学教育機会を提供しており、大阪公立二大学の学生一人あたりの純経費は、首都大学東京の8分の1なのです。大阪は「東京に比べて地域内総生産(GRP)が低い」し、かつ国公立大学数も数少ない地域です。加えて橋下氏自らが立ち上げた「大阪府市新大学構想会議」の「提言」(2013年1月)によれば、「大阪府・市両大学は、公立大学の使命である地域貢献について、高い評価を得ている」(前掲『新大学構想<提言>』31頁)と記述しています。かかる分析・評価と合わせて、それぞれ個性を発揮しながら存在してきた大阪府大及び大阪市大の二つの大学は、教育と地域貢献の二つの面から、公立大学としての役割を立派に発揮してきたことは明らかではないでしょうか。
橋下徹氏の知事当時からの主張である大阪府下にある「府・市公立大学の二重行政」なる批判は、その正反対の評価に帰結することになります。

桜田照雄 (阪南大学・教授) 経営財務論
私が都構想を懸念する理由の1つは、デマゴギーによる大衆扇動という橋下氏の政治手法にあります。いま1つの理由は、都構想にとって唯一の地域政策であるカジノ(賭博場)誘致は、「公共の福祉に反しない」という要件を充たさないばかりでなく、それ自体、決して儲かる商売ではないことが明らかになっています。将来を危うくする都構想にはきわめて深刻な問題があると考えます。

高寄昇三 (甲南大学・名誉教授) 財政学・行政学
戦後の地方制度改革は、地方制度は、市町村の現地総合性の強化を図っていくことを基本としてきた。大阪市を分割し、権限・財源を大阪府に吸収すれば、大阪市民への生活サービスの低下は避けられない。消防のように基幹的サービスがなくなれば、災害救助でも大きな支障となる。これらの地方行政は、公共投資型でなく、生活サービス型であり、府市統合の必要性はほとんどない。

鶴田廣巳 (関西大学・教授) 財政学
1.「大阪都構想」という呼称は市民の認識をくもらせるまやかしの呼称です。今回、住民投票で「賛成」票が1票でも多ければ、実現するのは大阪市を廃止・解体してこれまでの大阪市域に5つの特別区が成立することだけです。
2.大阪府と大阪市の二重行政が税金のムダづかいを生むというのが、「維新の会」が「大阪都構想」を主張する最大の根拠になっています。しかし、その主張には根拠がありません。
3.橋下市長が「二重行政」を声高に主張するのは、大阪における大規模なインフラ開発の権限と財源を大阪府に集中するためにほかなりません。
4.「維新の会」は、広域自治体である大阪府に権限と財源を集めて大型開発を進める一方、特別区や大阪府下の市町村など基礎自治体は住民福祉と住民自治を担うと主張しています。しかし、巨大開発のために基礎自治体は「大阪都」に権限や財源を吸い取られますから、住民福祉が充実するなどというのはまったくのまやかしです。多くの重要な事務が一部事務組合に移管されることから、市民向けの行政に混乱が起こるのは避けられません。
5.大阪都になれば大阪市は解体され、5つの特別区に分割されますが、特別区の間には大きな財政力の違いが残ります。そのため、特別区間の財政力を調節する財政調整制度が必要になりますが、特別区間での調整はきわめて難しい課題です。
6.都市、とくに大都市は長い歴史によって作り上げられた構成体です。大阪市は戦前の名市長関一のもとで都市行政の先進的な事例を数多く生み出し、都市基盤の整備や環境政策、文化行政などの分野で全国の都市の手本となる成果を挙げました。大都市の持つ集積のメリットを生かしつつ、「煙の都」を「住み心地よき都市」にするための施策は全国の都市の模範ともなりました。大阪の再生は、こうした先例にこそ学ぶべきであり、都市の解体によって再生を果たすことは決してできないでしょう。

冨田宏治 (関西学院大学・教授) 政治学
大阪市議会・府議会が熟議の末に否決した協定書案が、ほぼそのままのかたちでゾンビの如く復活し、住民投票に付されていること。しかもその背景に、改憲を目論む安倍首相と中央政界への進出を目指す橋下市長の政治的取り引きがあったのではないかと強く疑われること。ここにこそ、「大阪都構想」なるものの最大の胡散臭さがあります。野心的な二人の政治家の取り引きの結果、歴史ある大阪市が消滅し、財源も権限も奪われた特別区へと解体される。そしてその結果、大阪市民が築き上げてきた財産が次々と切り売りされ、行政サービスも著しく低下する。そんなことを許して良いのでしょうか。

中山 徹 (奈良女子大学・教授) 都市計画学
今まで進めてきた大阪のまちづくりを抜本的に見直し、国際化時代に相応しいまちにつくり変えるべきである。そのためには政令指定都市としての権限、財源を最大限活用すること、現区役所を軸とした参加型まちづくりを徹底させることが重要である。しかし大阪都構想では、大阪市を廃止し、現区役所を出張所に変え、従来型まちづくりの延長であるカジノ誘致、高速道路などのインフラ整備を進めようとしている。このような大阪都構想では大阪の活性化は望めず、破綻への道を歩むことになるだろう。

平岡和久 (立命館大学・教授) 地方財政学
道府県と政令市とのいわゆる「二重行政」については、多くの場合ほとんど問題になっていないことから、そもそも政令市を解体する理由にはならない。そのような理由にもならない理由で大阪市が廃止され、分割された特別区が失う財政権は大きなものであり、大都市税制である事業所税や都市税制である都市計画税を失うばかりか、すべての市町村が有する固定資産税や法人住民税までも失う。特別区に対する財政調整があるから問題ないというのは、課税権の重要性を無視するものだ。大阪市民はバラバラにされたうえに一般の市町村がもつ課税自主権すら大幅に失うのである。大阪市民は、24区の地域共同体を基礎に大阪市という共同体を基礎とした自治体を形成し、継続・発展させてきた。「大阪都構想」が通れば、大阪市民は共同体としての大阪市を失うとともに、共同体がもつ大都市行財政権限を失うことになる。その損失は計り知れない。

広原盛明 (京都府立大学・元学長) 都市計画
大阪府市政は高度成長期以降半世紀近くにわたって環境破壊の開発競争を繰り広げてきた。白砂青松の浜寺海岸の埋め立てに始まる大規模な大阪湾埋め立て事業、水の都の景観を破壊する高速道路建設網の建設、思いつきテーマパークや巨大タワービルの乱造など枚挙の暇もない。
いま大阪に必要なのは分権型のまちづくりであり、大阪都(府)に一元化された巨大プロジェクト中心主義の集権型都市計画ではない。大阪市24行政区に都市計画権限を委譲し、市民の生活空間を住民主体のまちづくりで充実させることこそが、大阪の「都市の品格=都市格」を取り戻す道である。

藤井 聡 (京都大学大学院・教授) 公共政策論、国土・都市計画
『大阪都構想』と呼ばれる過激な行政改革は、あらゆる学術的視点から考えて「論外」としか言いようがない。第一に、市の廃止は「大阪市」という一つの社会有機体の「死」を意味し、柳田国男が徹底批判した「家殺し」に他ならない。第二に、それに伴って大阪市民が税の支払いを通して享受している厚生水準が大きく毀損する。第三に、大阪市という大きな活力を携えた共同体の解体で、それによって支えられていた大阪、関西、そして日本の活力と強靱性が毀損し、大きく国益が損なわれる。最後に特定公政治権力がこうした危険性についての議論を隠蔽し、弾圧したままに、特定の政治的意図の下、直接住民投票でそれを強烈に推進しようとしている。つまり、それはその中身も推進手続きも論外中の論外の代物なのである。

道野真弘 (近畿大学・教授) 商法・会社法
今般、住民投票にかけられる大阪市廃止・解体構想については、(大阪都構想の)理念とは全くの別物であり、また、制度疲労が言われている特別区による方法が、大阪の景気浮揚につながるとは思えません。東京には、益々水をあけられるだけでしょう。
何よりも、賛否拮抗している中で、議論を尽くすことなく、勢いだけで大阪市廃止という暴挙に出ることは民主主義の濫用であります。大局的見地から、時間をかけてでも議論し、よりよい大阪市の形を少しでも多くの人が納得するように示すのが政治の役割ではないでしょうか。

村上 弘 (立命館大学・教授) 行政学・地方自治論
書店に並ぶ本は、大阪都反対が圧倒的に多い。不思議なことに、橋下氏以外の維新の党の政治家は、討論会に出席しない。つまり、橋下氏の弁舌だけが、大阪都構想を支えているのだ。しかし、その勇ましい弁舌は、太平洋戦争時の「大本営発表」に似て、不都合な事実を語らず、良い結果をもたらす保証もない。
しっかりと、具体的に考えれば、府への権限・財源集中ではじめて可能になる政策は、実は、カジノの強行建設くらいしかない。都市開発、鉄道、高速道路、万博などは、これまで府と市は意見の違いはあっても交渉して進めてきたのだから。
むしろ大阪市廃止によって、その政策力も、行政サービスも分断され後退する。これまでの大阪市の充実した施設、24区にあった施設は、次第に縮小されていくだろう。また、市役所を失った大阪市域は、府からみると領域の3分の1に過ぎない存在になる。代わりに置かれる弱い特別区は、都市計画も産業振興もできない。エンジンが2つから1つになった大阪、2人いるパイロットの1人を操縦室から追い出した大阪は、かなり弱体化する。そんな「改革」を認めるのか、有権者はしっかり判断していただきたい。
便利なものも多い府と市の二重行政を「すべて悪い」、全国各地で賢明に分担・協調している府県と市を「相容れない」、危険の大きい大手術を「ともかく現状を変えましょう」と単純化する宣伝は、一方的でウソが多く、疑ってみるべきだ。(民主党政権や安倍政権を批判してきたマスコミや東京の学者が、大阪都に対して弱腰なのは、大阪都の複雑さと、異論には橋下氏や維新が「個人攻撃」するという異例のメカニズムとによるのだろう。)
しかも、住民投票の用紙自体が、詐欺的なのです。「大阪市における特別区の設置についての投票」と書かれているので、大阪市が廃止されるとは読めない。選挙での候補者の経歴詐称よりも、はるかに悪質だ。関係者は、政令市の廃止という真実を直視したくも、語りたくもないのだろう。
そのような投票用紙は、国の根拠法の1条に「関係市町村を廃止し」とあり、7条2項に「分かりやすい説明をしなければならない」とあるのに違反している。住民投票のあとで、投票は違法で無効だという訴訟が起こされる可能性もある。
当面は、マスコミや有権者が、これは「大阪市廃止分割構想」への投票だと繰り返し確認したうえで、みんなで投票に行くことがたいせつです。

森 裕之 (立命館大学・教授) 地方財政学
大阪市の廃止・解体・特別区化によって、大都市自治体にとって不可欠な都市計画等の行政権限と財源が大阪府に吸収される。大阪市民の税金の4分の3が大阪府税に変わり、国から市へ配分されている地方交付税交付金も大阪府が吸収する。それらを最終的に特別区へどれだけ再配分するかは大阪府の条例によって決定される。大阪府内の人口のうち大阪市には3割しか居住しておらず、特別区は将来たえず財政削減の圧力を受け続ける。特別区間の財政配分をめぐる区民同士の争いも延々と続いていく。大阪市民にとってのメリットは見いだせず、こんな不安定な財政制度は決して取り入れるべきではない。
大阪府市は特別区になった場合の財政シミュレーションを示しているが、再編効果には大阪市の事業の民営化(地下鉄・バスや一般廃棄物事業など)や「市政改革プラン」など、「大阪都構想」による二重行政の解消とは関係のないものが意図的に盛り込まれている。それらを差し引けば、純粋な再編効果は単年度でせいぜい2~3億円程度しかなく、その一方で「大阪都構想」によって初期費用600億円、ランニング費用20億円/年が必要となり、財政的に大きな赤字の発生が懸念される。
特別区でつくる一部事務組合(大阪特別区事務組合)で120もの事業を担わざるをえないことは、大阪市解体がいかに無茶な制度改革かを示す証左である。その予算は1000億円、職員数は400人に近くに上る。そこには国民健康保険や介護保険、多くの児童・母子・障害者・高齢者のための福祉施設や保健医療施設、文化・スポーツなどの市民施設が含まれている。これは大都市として一体的に取り組んできた市民サービスを無理に分割された特別区に共同処理させるために生じている。一部事務組合という「屋上屋」の組織で十分な議論はなされず、これらの大切な事業が事実上軽視されていることは重大である。

薬師院仁志 (帝塚山学院大学・教授) 社会学
橋下政治の最大の罪は、同じ大阪人の間に内部対立を煽り立てたことにある。以前の大阪は、支持政党や思想信条の違いがどうであれ、もっと人情味に溢れた街であった。だが、今の大阪には刺々しい相互対立が蔓延している。企業であれ国家であれ自治体であれ、不毛な内部対立ほど自滅的な状況はない。そして、内部対立から利益を得るのは、それを悪用する支配者のみである。だからこそ、マハトマ・ガンジーはヒンズー教徒とイスラム教徒の共存を説き、ネルソン・マンデラは黒人による支配ではなく黒人と白人の和解を訴えたのだ。目を覚まそう。真の「One Osaka」は、役所や行政の形式ではなく、人々の心の中で実現すべきものなのである。

■ 記者会見・非出席者(87名) からの所見 ■

青山政利 (近畿大学・名誉教授) 環境学・エネルギー学
きめ細やかな施策で地域住民の暮らしに寄り添い、地域の環境を守るためには自治体の規模は小さい方がいいと私は考えています。大阪市を解体し五つの特別区を設置するという「都構想」なるものは私の考えとは相反します。併せて二重行政の改善と称して、両校の伝統と役割を全く無視して強行しようとしている、大阪府立大学と大阪市立大学の合併にも重大な懸念を抱きます。

鰺坂 真 (関西大学・名誉教授) 哲学
大阪市は、中世以来、経済の中心地であるとともに、学問文化の都でもありました。井原西鶴・近松門左衛門などに代表される芸術・芸能の街であり、また、町人たちがお金を出し合って、高等教育機関・懐徳堂を設立し、ここから山片幡桃など優れた学者が生まれました。
幕末には緒方洪庵の適塾があり、福沢諭吉・大村益次郎など近代日本を切りひらいた優れた人材が育ちました。
これらは大阪市の優れた文化的伝統です。大阪市を解体・分割すると言うことは、これらの優れた伝統を断ち切る働きをすると危惧します。
大阪市は解体せず、文化・芸術・学問の街として発展するよう力を入れるべきです。

荒井文昭  (首都大学東京・教授) 教育学
集権的な体制をつくるため、東京府・東京市が廃されて東京都・特別区がつくられた歴史的経緯を忘れるわけにはいかない。教育行政の領域でいえば、特別区には市町村に認められている、教員人事について意見を言う権限(内申権)もながく認められて いなかった。それを変えていく契機の一つとなったのは、東京都中野区で取り組まれた教育委員準公選を求める住民の運動であった。大阪都構想では、東京都以上に特別区に自治を認めるといわれているようではあるが疑わしい。なぜならば、困難を抱える子どもたちの支援を地域で地道におこなってきた大阪市民の取り組みに対しては、支援の打ち切りなど、教育の地方自治を豊かにする政策をとってきていないからである。むしろ、大阪市民の不安をあおり立てて、「新しい都区」をつくるというフレーズのもとで、その実は、東京都の二番煎じを追求し、大規模な開発を大阪市民の声とは離れたところですすめることのできる仕組みをつくりたいのではないか。大阪には大阪固有の文化が形成されてきたのであり、大阪の地方自治を豊かにしていくことこそが求められている。

碇山 洋 (金沢大学・教授) 財政学
「都構想」は大阪市を解体し市民へのサービスを低下させるものでしかありません。財源の多くが大阪府に吸い上げられ、その使い道を市民が決めることはできません。しかも、いったん市を解体してしまうともとにもどせないことになっています。このような「都構想」には大きな危険性があると言わざるを得ません。

井出 明 (追手門学院大学・准教授) 観光学
藤井教授がたとえ誤ったことを述べていたとしても、権力者に対する学説からの批判の自由は守られなければならず、国会質問で取り上げるなどして圧力をかけるというのは、天皇機関説事件の例を持ち出すまでもなく民主主義を機能不全に陥らせる。民主主義は多数決だけで成り立つわけではなく、自由な意見の交換によって支えられているが、反対派の主張を権力的手段によって封じ込めた上での投票は、主権者の意思決定過程に誤りを生み出すことになりかねず、投票結果のレジティマシーを保障することは難しい。換言すれば、今回のように後戻りできない制度の変更を拙速に行うことは、主権者に予想し得ない被害が生じる可能性があり、現状では到底容認出来ない。

池上洋通 (千葉大学・元非常勤講師) 地方自治論
もともと東京都の特別区制は、憲法の「法の下の平等」原則に反する疑いがあり、現実にも、多摩地域(30市町村)、島嶼各町村との間に無視できない格差が生じていて、特別区間の格差もまた深刻である。こうした現実の下で、いま東京都の人口出生率は都道府県中最低であり、なぜ「都」になりたいのか、全く理解できない。
さらに、大阪市の解体だけでなく、大阪府の性格を変える投票に、府民全体が参加できなければ、これまた憲法違反の暴挙というほかはない。

石上浩美 (大手前大学・准教授) 教育心理学・教師教育学
大阪の教育のスローガンのひとつに,「ともに学び,ともに育つ」というものがあります。それを基に,これまで大阪の学校文化・地域文化が形成されてきました。ちょうど現在公開中の「みんなの学校」に象徴されるような風土が,もともと大阪市内の学校・地域独自の文化でした。今回の案は,それらを決定的に破壊しようとするものです。大阪の教育はこの6年間の誤った教育市政によって,すでに大きく揺らいでいます。現場の教員や子ども,地域を大切に育てようとはしていないためです。
大阪市立大学と大阪府立大学の統合問題もそうですが学問や教育は効率性だけで語られるものではありません。
人を育てるためには,時間とお金もかかります。維新の会やマスコミから流布されている広報のいくつかには,明らかな瑕疵(特に統計データ)やダブルバーレルがあり,公平性が担保された情報ではないことを危惧しています。これらひとつひとつに対して,初学者にもわかるように説明し,論破するのが学者の仕事だと考えております。

石川康宏 (神戸女学院大学・教授) 経済学
「大阪都構想」は、住民の意思にもとづき住民の福祉向上をめざす自治組織を解体し、「大企業が潤えば、いまに住民も潤う」という破綻済みのトリクルダウン論にしがみついて、大企業奉仕の広域地方経営体をつくろうとするものでしかありません。市民の暮らしの改善に逆行するこのような政策を乱暴に押し進める『大阪都構想』には深い憂慮を示さずにおれません。

井上千一 (大阪人間科学大学・教授) 経営学
二重行政が「大阪」をダメにした。これが大阪維新の主張のひとつであり、「大阪都構想」を実施する根拠とされています。
たとえば、大阪府立大学と大阪市立大学が二つあることは“無駄”だとされ、同じ大学であるからこれらを一つにすればよいと主張されます。
本当にそうでしょうか。“無駄”と言うことは、学生も、教職員、キャンパスが“無駄”ということです。しかし、そうではありません。大阪の多くの人は、府大と市大というすばらしい大学で教育を受けられる機会があるということです。機会すら“無用”という考え方には重大な問題がはらまれています。それは大阪から優秀な人材を減らすことを意味するものであり、決して容認できることではありません。

今井良幸 (中京大学・准教授) 憲法・地方自治法
現在の「大阪市」は一般に憲法上の地方公共団体であると解されており、歴史的な経過が異なる東京都とは異なる大阪府において、「大阪市」を廃止することは憲法で規定する「地方自治の本旨」に反する事態が生じるのではないかと懸念されます。また、新たに設置される「特別区」は憲法上の地方公共団体とは解されておらず、その制度的な根拠は立法政策に委ねられることになり、その存在は不安定なものであると言わざるを得ません。現行法制度上でも二重行政を排除し、住民の意向を反映する運用を行うことは十分可能であるにもかかわらず、上記のような不安定な制度に移行することについて、情報が不十分なまま市民の決定に委ねられることには重大な問題があると考えます。

今村都南雄 (中央大学・名誉教授) 行政学
「中核市なみの特別区」設置をどれほど喧伝しようと、特別区は特別地方公共団体でしかなく、東京都制をモデルとした構想は時代に逆行するものでしかない。東京における特別区の自治権拡充の歴史をきちんと踏まえるべきであり、さもなくば、同じ轍を踏むことになるのは必定のこと。特別区になったその日から自治権拡充の闘いが始まることを覚悟しなければならない。

入江容子 (愛知大学・教授) 行政学・地方自治論
この度の都構想で、現状の大阪市において主な問題とされている二重行政、経済的地盤沈下等については、それらが現行の大都市制度に由来する問題とはいえない。また、これらの問題について詳細に政策学的見地から検討すると、明らかに問題が存在しているということもいえない。少なくとも、目先の経済的観点からのみ判断するのは非常に感覚的であり、地方自治の本旨である住民自治、団体自治の観点から、住民と行政の関係、公共サービスのあり方、自治体間の事務配分等の問題を検討すべきである。今回の都構想では都(知事)への集権的体制を作り上げることになり、分権の流れに逆行する。

岩﨑裕保 (帝塚山学院大学・非常勤講師) 教育学
民主主義は理念であり手続きです。
「都構想」についての民の声はどのように形成されてきたのかが見えていません。
・行政制度の課題であるなら、先ずは行政の現場での自由で開かれた話し合いから始めてください。
・それを受けて、市民が意見交換を重ねていくというプロセスが不可欠です。
・「都構想」は議事進行における「動議」のようなものですから、「原案(現状)」に対して丁寧な説明が求められます。
・その行政制度に手をつけることで、どのような理念(例えば、再生可能エネルギー都市にする)を実現できるのかというレベルの「構想」であるべきです。
・「都構想」というニックネームのような用語ではなく、実態を表す「本名」で議論をしてください。

岩本智之 (京都大学・元助手) 気象学
「高等教育、科学研究の分野でも「二重行政」の批判は当たらない」
大阪に府立大学と市立大学が存在することは決して無駄な重複が温存されているわけではない。それぞれが独自の伝統のもとで高等教育、科学研究において貴重な役割を果たしてきたことは否定できない。大阪という町が二つの大学を発展させていくことは、大都市としての責務であり、品格にかかわることである。
府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所も府民、市民の健康と環境を守るためいっそう拡充を図るべきである。
これらを浅薄な「効率性」のみを追求して統廃合するなら、府・市民のみならず国民的損失となるだろう。

上園昌武 (島根大学・教授) 環境経済学
大阪都構想は、住民サービスを著しく低下させかねない地域切り捨てです。また、住民投票への手続きにも問題があります。維新の党は、この構想の内容を具体的に示さず、デメリットや弊害を隠したまま住民投票にかけるのは、詐欺行為に等しいと言わざるをえません。
メリットとされる二重行政の解消は、現行の大阪市と大阪府の体制でも可能であり、橋下市長はその努力を怠っていることに問題があります。

内田 樹 (神戸女学院大学・名誉教授) 現代思想
大阪市廃止構想の本質的な瑕疵は、『自治』の問題であるにもかかわらず、徹底的に『効率』の問題(それがもたらす『経済効果』の問題)として語られていることです。市民の自治権と効率的な行政サービスの交換取り引きに応じようとする人たちは、一度放棄した自治権はもう回復できないことを忘れています。

梅原英治 (大阪経済大学・教授) 財政学
「大阪都」構想とは大ウソであり、「新大阪府」構想と呼ぶのが正しい。「新」というのは大阪市を廃止し、大阪府の5つの特別区へ解体するからだ。大阪市の廃止・解体は、政令指定都市として有する財源と権限を失い、大阪府に吸い上げられることを意味する。これは大阪府への集中・集権であり、隷属への道である。縮小された権限と財源の下で、特別区は団体自治も住民自治も発揮することができず、特別区間での財政調整をめぐる争いと、住民間での負担増または歳出減の押し付け合いに終始することとなろう。府と市が対等に協力し合ってこそ、大阪は未来を切り拓きうる。

遠州尋美 (大阪経済大学・教授) 地域政策学
理由らしい理由と言えば「二重行政解消」が唯一と言える都構想。その本音が大阪市の予算を吸い上げて,大規模開発や大企業奉仕に自由に使える財布が欲しいということにあることは間違いない。「二重行政解消」を声高に叫ぶことは,市民のくらしをないがしろする維新の政治姿勢を自ら暴露するものに他ならない。危機管理の基本は「ダブルチェック」,東日本大震災の経験から導かれた減災の基本は「多重防御」であることを思い起こして欲しい。安心・安全のくらしを守る「人間の安全保障」に必要なのはセーフティーネットの重層化だ。無駄のない効率的な行政は必要でも,二重行政解消を口実に庶民のくらしを破壊する都構想を許すことはできない。

遠藤宏一 (大阪市立大学・名誉教授) 財政学・地方財政論、地域政策論
戦後の大阪府・市政、あるいは関西財界の都市・地域政策の失敗は、一週遅れで東京の後追い模倣をする公共・土木事業依存の間接的振興策(外来型開発)を続けてきたことにある。
しかし新世紀迎える頃、大阪の都市経済の「絶対的衰退」の原因は、関西系企業の本社機能が東京流出し、さらには学術・芸能・文化までも大阪からの離脱したことにあるということに気付き、その反省から官民あげて大阪・関西版「内発的発展論」ともいえる「関西再生」計画を構想し、その具体化への取り組みが提言されたことがある。ちなみにその典型は関西経済連合会『関西経済再生シナリオ』(1999年12月)等にみることができるが、それぞれ共通して、分厚い集積のある中小企業(「エクセレント・スモール・ビジネス」)や歴史遺産・伝統文化・芸能等の関西の強み(=「知的財産」)を現代的に再活用することなどを提言していた。
しかしその一方で、このようなビジョンの「推進主体」として「府・市統合」論も強調されていたという問題点も隠されていたが、今日の大阪都構想はこの側面のみが突出して顕在化したようにみえる。しかし「大阪都」という行財政制度をつくれば、東京都に匹敵する経済力・行財政力になるというのは本末転倒した錯覚としか言いようがない。

大矢野修 (龍谷大学・教授) 自治体政策論
自治体政策論の立場で考えれば、今回の大阪都構想はズサンな制度設計案といわざるをえず、その政策意思決定プロセスにおいても『いいことづくめの情報操作』『異論封じ込めの政治』が行われました。したがって、都構想のシステムに大阪の未来を託すことは著しく不合理だと考えます。
大阪市民にとっては、今回の住民投票は「強制された権利行使」そのものです。膨大な時間と労力、コストをかけて大阪市を廃止・分割するという究極の浪費・無駄に対し、明確かつ重大な疑念を抱くべきであると考えます。

岡田知弘 (京都大学・教授) 地域経済学
今回の住民投票は、大阪市をなくして5つの区に分割するかどうかをめぐるものです。これによって「大阪経済が活性化する」といわれていますが、地域経済学の視点からみると、むしろ大阪経済のさらなる衰退を招くといわざるをえません。そもそも大阪経済の衰退や財政危機は、大阪府と大阪市の「二重行政」によるものではありません。1980年代以来の経済のグローバル化の結果、大阪経済を担ってきた製造業が衰退したうえ、2000年代初頭の金融大再編によって大阪に本拠をおく住友・三和グループが解体・再編され、東京に本社・中枢機能を移したことが大きな要因です。加えて、関西新空港やATC、WTCといった巨大プロジェクト開発で「活性化」しようとしましたが、受注企業の多くは東京や海外企業であり、大阪経済を潤すどころか巨額の借金を残しました。「大阪都」構想でも、カジノやリニア建設がいわれていますが、同様の結果を生み出し格差と貧困を拡大するだけです。今必要なのは、現在の大阪市や区の行財政権限と住民自治機能を強めて、大阪経済の圧倒的部分を担っている中小企業群の再投資力を高めることで、主権者である住民の福祉の向上を図ることです。

奥野卓司 (関西学院大学・教授・大学図書館長) メディア表象論
「大阪都構想」は、図書館、博物館、美術館だけでなく、文楽など伝統文化をふくめ、大阪ばかりか、上方の文化を破壊する危険性をはらんでいます。日本文化、伝統文化を守る立場から、「大阪都構想」に対して重大な疑義があると考えます。

紙野健二 (名古屋大学・教授) 行政法
大阪都になって、住民のための自治は拡大しません。東京都23区の多くは、数十万の人口を擁しているのに、市ではなく自治を大幅に制限されているのです。大阪市をつぶしてはなりません。「二重行政」攻撃など、当をえていません。

神谷章生 (札幌学院大学・教授) 政治学
いつの頃からか「改革」やら「変革」やらが安易に使われ、何かをぶっ壊すことが正義であるかのように語られ始めました。共産党が政権を取って革命をするならば総スカンを食らわせるであろうのに維新あたりがぶっ壊しにかかると喝采を送ってきたわけです。皆さんもっと冷静になってください。急激に変化に人間は耐えられません。変える前に立ち止まってよく考えることは極めて重要です。急激な変化の向こうには破綻しかありません。

川瀬光義 (京都府立大学・教授) 財政学
1925年、大阪市は面積を3倍に拡大する市域拡張を行いました。対象となった地域には、大量の農地が含まれていました。都市化した地域の編入しか認めないという当時の政府方針を打ち破ったこの施策には、大都市化の時代を見通し、「住み心地良き都市」という理想をめざす、関一(せきはじめ)市長のこだわりがありました。このとき形成された大阪市域は、現在のそれとほぼ一致しています。100年近くにわたり営々と築かれてきた大阪市の財産を解体することに、どのような意味があるのか、大阪市民の皆さんがよく吟味され、賢明な判断をされることを期待します。

河野 仁 (兵庫県立大学・名誉教授) 大気環境学・気象学
都市は生き物である。都市構造の変化に対応して、環境行政の課題も変化してきた。しかし、都市と環境行政は表裏一体の関係にある。大都市としてまとまりのある環境行政を進めるためには、政令指定都市である大阪市という行政単位が必要であり、5つに分割された特別区では対応しきれない。大阪市域の環境対策に関しては、大阪府からの規制権限移譲を受けて、大阪市が行ってきた(いわゆる二重行政はない)。また、大阪市は環境分野の専門技術者を育ててきた。大阪市立環境科学研究所もその一つである。これ等の専門家集団は都市環境を守るために大きな役割を果たしている。大阪市の解体は、この専門家集団の解体につながる。いったん解体すると専門家集団の再育成には数十年の年月を要する。

菊本 舞 (岐阜経済大学・准教授) 地域経済論
「都構想」では、「5特別区への再編後も、大阪24区の地域の伝統がなくなる訳ではない、平成の大合併のときと同じように、地域のコミュニティや伝統、文化は消えない」と述べています。しかし、平成の大合併を経験した多くの市町村の住民が現実に直面していることは、身近な地域の催事や旧市町村の範囲で行われてきた伝統行事等の活動及び財源の縮小・廃止であり、身近な地域社会を単位とする住民たちの思いと行政との間に大きな距離が出来てしまったということでした。いまの大阪に必要なことは、住民同士が互いに親しみや誇りを持てる地域を基盤に、長い時間をかけてこそ培われる伝統や文化を生かし、それを地域経済の礎とできるようなまちづくりであり、それは大阪市の廃止ではないでしょう。

喜多善史 (大阪大学大学院・元助手) 大気環境学
大阪市民の健康を守るため、大気汚染状況の常時監視測定は現在大阪市域26箇所の大阪市管轄局において継続され、PM2.5、NO2など約10種類の大気汚染物質のデータが時々刻々蓄積されて、大阪市の大気環境保全施策の制定・点検等にとって貴重なデータとして用いられている。測定機器の保守点検・データ整理などを含め測定体制の維持・充実のためには、専門職員を適切に確保し、大阪市全域を管轄する環境局を存続・強化することが不可欠である。大阪市を特別区に分割することは上記の施策の継続と逆行し、到底認めることができない。

木谷晋市 (関西大学・教授) 行政学・政治学
政治学的に分析するなら、大阪都構想とは、思い付きに過ぎない政策を否定された維新の会が、これを実現するために、権力と財源を府に、そして一人の知事に集中すること目指したものである。これを進めてきた手続きは、行政学・政治学的に考えて適正なものではなかったし、行われた説明は願望とまやかしに基づくものであった。また、構想は、地方制度に対する正しい認識に基づいたものではなく、税財政についての適切な方策でもない。維新の会が打ち出した政策が不適切であることは、橋下知事・市長の実績を見れば明らかである。手続き的に不適切な住民投票とは言え、とりあえずはこの構想を否決し、大阪府・市のあり方を考え直す契機とすることが得策であることは間違いないと考えられる。

北野正一 (兵庫県立大学・名誉教授) 経済学・経済政策論
大阪はなぜ日本の大都市の中で衰退NO1か?お隣の神戸に聞いたらよく分かる。
神戸は明治初年、人口2万の兵庫津が、日中戦争時に100万都市に、日本一の50倍に膨張した途端、神戸生れの大企業は工場を瀬戸内へ、本社を大阪へ移したのである。その大阪は、日本が電機等で経済大国を謳歌してバブルに浮かれた時、本社は東京へ、更には海外へ進出して、失われた22年の先鞭をつけたのである。
大阪湾を埋め立てるスバルプランは失敗し、環境は悪化し、財政は破たんした。東京をマネた二眼レフ構想も失敗し、橋下氏の都構想は行政機構のマネだ、失敗は必定だ。
1885年、日本の産業革命は大阪の大阪紡績で始まり、中小企業の1万本の煙突で埋め尽くされた。そこから生まれた大企業は今や海外へ流出し、中韓大手に敗退するに至った現在、残された大阪に集積した中小企業は、競争力が世界一となっている。今、これを支援する産業政策、住民主体の福祉の街、緑豊かで子供が育つ街、つまりすこやか大阪が求められる、これが発展の方向だ。そのためには、住民に近い大阪市の区を活性化することだ。カジノなどはバブルの後遺症だ、決して、都への集権ではない。

窪田好男 (京都府立大学・准教授) 公共政策学
橋下徹氏の政策づくりの特徴は、WTCへの大阪府庁舎の移転に典型的に見られるように、調査の軽視です。よい政策づくりに調査は欠かすことはできません。いわゆる「大阪都」構想にも調査不足の拙速さばかりが目立ちます。提供される情報は、客観的なデータではなく、根拠の乏しい期待や願望がほとんどです。これではうまくいってもラッキーヒット、普通はしくじると危惧されます。「やってみなければわからない」。そういう人もいるかもしれませんが、きちんと調査する時間的余裕があるのに、わざわざ危ない橋を渡るのは責任ある政治家のすることではありません。

栗本裕見 (大阪市立大学・特別研究員) 政治学
住民として市による「都構想」説明会に参加した。住民は「行政サービスの消費者」であり、福祉や教育など受益を意識しやすいサービスの意思決定にだけ関わればよく、それ以外の問題は「府」に押しつけてしまえば、(見かけ上)「楽」になるというのが市長の「住民自治」であった。住民に最も身近な自治体の役割やその形は多様であり得るが、日本社会全体が直面する人口減少と高齢化、経済の脆弱さ、さらには社会問題もまた集積する都市という空間の中で、住民にも行政にも複雑な判断が求められるのは明らかである。自治体としての形はもちろんだが、住民も「消費者」に成り下がってしまってよいのかという問いが突きつけられている。

澤井 勝 (奈良女子大学・名誉教授) 財政学
大阪市廃止と権限が制限された5区の設置によって、生活を直接支える仕事が市民からは見えにくくなり、アクセスしにくいものになるうえ、ばらばらになる恐れが強い。たとえば、現在は大阪市と24区が分担して高齢者を支えている「介護保険制度」ば、5区がつくる一部事務組合に移され、窓口も担当職員も見えにくくなる。一部事務組合の長は区長の互選で選ばれる。その議員は5区の議員から選ばれ、派遣される(普通、会議は年に2回ほどしかない)。このように市民から遠い存在となる。それに一部事務組合の職員は、介護の現場から遠く、区の職員や事業所の専門家との連携は今以上に難しくなることは目に見えている。高齢化社会で求められる介護、医療、福祉を統合した「地域包括ケア」からは遠ざかる一方となるに違いない。当然医療費を下げることはますます困難になる。それが若い世代の負担をより重くすることが強く危惧される。

塩崎賢明 (立命館大学・教授) 都市計画学
「都構想」は大阪市を廃止し5つの区に再編統合するというが、大阪にとって何が良いのか全く不明です。むしろ、大阪市の財源が府に吸い取られ、市民の自主的なまちづくりができなくなるなど、マイナス面が大きい。5つの区への再編というのは市町村合併と同じで、地域自治を破壊し、災害時に大変な困難をもたらすことが、東日本大震災で明らかです。
橋下氏は「関西再生にはこれしかない」と言って超高層のWTCビルに府庁を移転したものの、ビルは東日本大震災で大損傷。防災拠点にするという思いつきアイデアのデタラメさが実証されました。橋下氏のまことしやかな宣伝に惑わされず、大阪市民が主人公となって明日の大阪を築いていくべきです。

重森 曉 (大阪経済大学・名誉教授) 地方財政学
大阪市を解体し5つの特別区を設置するという今回の提案は、大阪大都市圏におけるガバナンスのあり方を左右する重要な選択である。その理念、制度設計、住民生活との関係等について、住民参加による熟議が尽くされなくてはならない。
ところが事態は、十分な議論もないまま、一人の政治家とその政党による強引な運営によって進められてきた。その結果提案の内容は多くの欠陥とあいまいさを含むものとなっている。たとえば、二重行政の解消どころか、数多くの「一部事務組合」が導入されることによって、大阪府・5特別区・一部事務組合という三重行政による混乱と非効率がもたらされるおそれがある。
大阪の地方自治の歴史において、とりかえしのつかない愚挙とならないことを祈っている。

下地真樹 (阪南大学・准教授) 経済学
仔細に中身を検討しても、存在しない二重行政に依拠した存在しないメリットの喧伝、希望的観測によるコストの過小評価等、賛成できる要素は全く示されていない。その上、賛成反対を離れて考えても、大阪市の公式の住民説明会の内容・運営があまりに公平性を欠いており、また、藤井氏ら学識者や市役所職員の言論への介入・抑圧も本来あってはならないことである。これら一連の橋下市長の行為は、彼の民主主義への無理解と傲慢さの表れであり、そのこと自体も「都構想」なる大阪市解体構想の危険性の証しである。この危険な政策に向けて、「不誠実な扇動」によって人々が動員されていく状況を深刻に憂慮しています。

釈 徹宗 (相愛大学・教授) 宗教学
我々は数十年かかって少しずつ成熟した民主主義の感性を身につけてきました。成熟した民主主義においては「手順」が非常に重要です。手順こそが強引な急ハンドルを抑制するシステムとなっています。しかし今回はあまりに自作自演の勝手な順序であり、さらには「無理やり法定協を手中におさめる」「予算と恫喝をちらつかせて各方面を誘導していこうとする」など、いずれも実に悪質な手口であると感じました。看過できません。  まして、この構想の行き先がリニアとカジノの誘致であるなら、今回の住民投票で否決されることが次世代の大阪にとって望ましいのではないかと思えてなりません。

白藤博行 (専修大学・教授) 行政法
橋下氏は、東京に負けない都を造るというけれど、ぜひ東京都の政治・行政の現実を観てほしい。東京都は大規模すぎて、自治の実体を持たない「非自治体」です。だから法律上の「都民」はいても、地方自治の担い手たる「自治体民」はいません。市民・住民のいないところに市民自治・住民自治は存在しません。東京都制はすでに失敗しているのです。大阪都の幻想を掲げ、大阪市・大阪市民が消えて喜ぶ者に、大阪市・大阪市民のオールをまかせること、自治が消えて喜ぶ者に自治のオールをまかせること、民主主義が消えて喜ぶ者に民主主義のオールをまかせること――これらはいずれもきわめて深刻かつ重大な危険性を孕んでいるのです。

菅原敏夫 (法政大学・元非常勤講師) 地方財政学
先日終わったばかりの統一地方選で、東京の6つの特別区は「翌日開票」でした。東京都内のほかの市町村にそんなことはなく、当然「即日開票」でした。理由は節約です。特別区にはお金がないのです。開票事務に携わる職員の残業代を節約しなければならないほどです。依存財源(都区財調交付金)に頼る割合が多く、千代田区さえそれなしには運営できていません。特別区という制度は、東京の特別区自身が切に抜け出したいと思っている最悪の制度です。特別区制度によって自治を市民から引き剥がしてはなりません。課税自主権を大幅に制限された特別区制度を絶対に導入してはなりません。

杉本通百則 (立命館大学・准教授) 環境論
いわゆる「大阪都」構想は内容面でも手続面でも道理のないことが明白である。その真の狙いは大阪市の廃止・解体により権限・財源を広域経営体に集中することでグローバル企業に奉仕する大規模開発を進めることにあり,道州制への布石でもある。このことは同時に地方自治権の弱体化を意味し,福祉・教育などの行政サービスの低下は避けられないものとなろう。都市政策に関わる住民自治は激烈な公害闘争の中で不十分ながらも市民が勝ち取ってきた権利でもある。住民参加を欠いたままの大型地域開発による成長戦略は環境破壊に結びつく危険性が高いであろう。また唯一の根拠であった「二重行政解消」の虚構性が明らかとなったにも関わらず,改革者のイメージのみを強調して具体的内容を語ろうとせず,市民に判断材料を与えないまま選択を強いる手法は「戦後民主主義の危機」と言わざるをえない。

住友 剛 (京都精華大学・教授) 教育学
子どもが生まれ、育ち、おとなになり、年老いて、誰かに看取られて亡くなる。また次の子どもが生まれ、育ち・・・。
そのような人々の「いのちのサイクル」を、これまで私たちは家庭、地域社会の人々、NPO、企業、学校や保育所・幼稚園、そして行政のさまざまな取り組みによって支えてきました。また、「いのちのサイクル」を支える営みの累積によって、まちの歴史や文化が育まれ、さまざまな産業が育ち、経済も活性化してきました。
いま、私たちがこの大阪のまちで本気になって取り組まなければいけないことは、そのような「いのちのサイクル」を支える営みを豊かにすることであって、それを深く傷つけたり、ましてや破壊することではありません。

住友陽文 (大阪府立大学・教授) 歴史学
今度の住民投票は、投票率を一切問わず一票でも賛成が上回れば、地方自治体としては126年の歴史がある大阪市が消滅し、二度と復元できなくなるような決断を、日本国籍を有する大阪市民にだけ迫っている。にもかかわらず、この投票にはいくつかの無視できない前提が欠如している。一つ、大阪市の廃止など、「改革」の域を越えた事柄が問われているのに、それが十分伝えられていないこと。一つ、大阪府や大阪市をめぐる問題点についての現状認識が共有されないまま「二重行政の解消」という虚構が先行し、その議論に乗らない者は「対案を示せない」と切って捨てられる議論が横行していて、民主的に議論を進める上できわめて不公正な状況にあること。この二つである。復元できないシステムを閉じようとしているのだから、今一度考え直すための選択のやり直しをするべきだ。

関 耕平 (島根大学・准教授) 財政学
日本社会で蔓延しつつある、自治と自主を掘り崩す動きに強い危機感を覚えています。大阪市における住民自治を崩し、住民から行政を遠ざける大阪都構想には強く懸念を抱かざるをえません。

田結庄良昭 (神戸大学・名誉教授) 地質学
都構想では、いかにお金を儲けるかのみがうたわれ、広域な区になる結果住民へのサービスが低下し、介護など福祉も低下します。

高橋 勉 (岐阜経済大学・教授) 経済学
これは「大阪都構想」ではない。「第二東京都構想」である。しかも,それは「自称」にすぎない「都」である。現在の日本社会において必要なことは,人々の生活の基盤となる「地域」の再生であって,大規模開発に都合の良い「市場」の整備ではない。大阪が目指すべきは,「大阪」という文化のもとで,大阪に暮らす人々にとって誇りが持てる「大阪」であり,それは「東京化」を進めることによってもたらされるものではないだろう。この「構想」では,進むべき方向が逆ではないだろうか。

高森康彦 (大阪府立大学・名誉教授) 生物学
構想では、二重行政の解消や、水道事業やゴミ収集事業等の民営化による財政効果がうたわれていますが、他方ではそのような効果はないという主張があります。市民への行政サ-ビスは、今よりよくなるのか、疑問に思われます。二重行政の解消では、市立や府立の大学、研究機関、図書館、病院等の統合が挙げられていますが、財政効果のみを考慮する統合は、地域で営々と築かれてきた知的財産、伝統、文化を壊し、市民や府民の利益にかなうものとは思えません。現段階では多くの市民が、都構想が実現した将来の形がどうなるのか、そのメリット、デメリットを十分に理解しているとはとても思えません。橋下市長の改革イメ-ジにつられて賛成している市民も多いのではないかと推察しています。一旦住民投票で賛成が多数となれば、もう大阪市への後戻りが出来ないと言うことですので、市民はとても重要な判断を迫られています。ここのところを十分考慮して、投票してほしいと思っています。

高山 新 (大阪教育大学・教授) 財政学
今回の住民投票は、1世紀以上にわたって住民とともに歴史を積み上げてきた大阪市を無くすか否かを問うものです。しかし、これほど重要な決定が求められているにもかかわらず、判断のための根拠となるような情報はまったくありません。議論の始まりであった無駄の削減と財政効果に関する数値についても二転三転し、現在では効果そのものがあるのかさえも疑わしい状況です。そもそも広域行政を担う大阪府と基礎的自治体である市町村は、それぞれの役割と視点から行政を行っているので、「二重行政」が無駄とは一概には言えないのです。どうすればよりよい大阪を展望できるのか、その答は大阪市の廃止にあると結論する根拠を見出すことはできません。

竹永三男 (島根大学・名誉教授) 歴史学
道州制につながる構想という点では、「同床異夢」のこの制度は、本質的には中央集権化の手段として案出されたものであり、地方分権に資するという議論は、理論上は考えられても現実的なものではありません。そのことは、
①道州制論者が、強大な「道州政府」を住民自治の仕組みと捉えるよりは、強大な統治機構
と考えていること、
②歴史的にも、敗戦直前の地方総監府制度が、本土決戦対応の「地方政府」として構想され、
官治的地方行政機構(国家の地方統治機構としての都道府県と制限された自治権しかもたな
い市町村)の極限形態として実施されたことなどの事例があること、
③財界など道州制推進主体が、住民自治の豊富化に対して全く反対の立場をとっている等の
政治・経済情勢の下では、地方分権的道州制は空論にならざるを得ないこと、
④「平成の大合併」で統合された旧町村や地域が、行政の周縁に置かれていることが、道州制、
今回の場合では「大阪都構想」により、さらに大規模に展開することは必至であること、
などに照らして明確だと考えます。

田中幹大 (立命館大学・准教授) 中小企業論
大阪都構想の経済成長戦略には、大阪経済や中小企業の活性化をもたらす根拠が示されているようには思えません。戦後の大阪の歴史をふまえれば、東京との都市間競争を意識して行われた大規模開発は、財政負担に比して大阪経済や中小企業に寄与するところが少なかったと反省されてきました。したがって、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ソウル、上海などとの都市間競争のために大阪都をつくり、財源と権限委譲によって大規模開発するという構想は、競争の範囲を国際版にしただけであり、目新しいものではありません。つまり、大阪都構想には、新しさも、反省もないのです。イメージだけで「大阪都構想は何か新しいことをしようとしている」と思うことは危険です。

辻山幸宣 (中央大学・元教授) 行政学
自治体は区域と住民そして自治体政府だけで成り立っているわけではない。その地で起きた歴史的事件やできごとの記憶が紡ぐ「わがまち」への想いがあって、その存在の重さと現実感がある。1615年、大坂夏の陣で大坂城が落城したこと、「八百八橋」と称されるまち並み、明治期の3市特例(大阪・京都・東京)、日本初の公営地下鉄の梅田-心斎橋間の開通。これら多くの出来事を生み出したその街は「大阪市」にほかならない。いまその「大阪市」を市民の投票で廃止することは、私には、人々の記憶や「大阪」の歴史的存在をも消し去ろうとしているように思えてならない。

槌田 洋 (前日本福祉大学・教授) 地域経済学・地方財政学
大阪市を廃止して知事に権限を集中させるのは、あまりにも時代錯誤です。私はヨーロッパの自治体を勉強していますが、今は各都市が独自の産業や文化を背景に世界と直接に繋がる時代であり、そこにこそ活力が生まれています。府の役割が重要なのは、市町村による活動を支援しまた調整することにあり、決して市町村に取って代わることではありません。

永島 昂 (立命館大学・准教授) 日本経済論
カジノ構想などの大型開発に依拠した成長戦略ではなく,大阪の中小企業の技術力を活かした大阪経済の活性化を目指すべきである。

長友薫輝 (三重短期大学・教授) 社会福祉学
大阪市民に是非を判断する材料が、提供されていないことに憤りを感じます。アンフェアでかつ虚構に満ちた説明を繰り返す手法の危険性は、映画『独裁者』でチャップリンが伝えたかったことではないでしょうか。この民主主義の危機をみなさんで笑い飛ばして乗り越えていきましょう。

中西大輔 (岐阜経済大学・専任講師) 流通経済論
私が都構想を懸念する理由の1つは、それにより商店街の衰退が進んでしまわないだろうかということにあります。
商店街は長い歴史の中で自然発生的に形成されてきた商業集積であり、単なる商の場としてだけでなく、人々が集まり、活動し、交流する場として機能してきました。大阪市はまさに商人の町であり、今なお商店街が、誰でもアクセスできる開かれた空間として機能し、人々の生活を支えていると思います。
そのような連綿と続く歴史的資産としての商店街が、「大阪都構想」によって一瞬にして解体されることによって、人々の生き生きとした生活が失われることになってしまうのではないかと強く懸念します。

中林 浩 (神戸松蔭女子学院大学・教授) 都市計画学
矛盾を解消するための合理的な組織改編というのは一般的にありうるが、この間の市町村合併をはじめ、自治制度の変更はよいものをつぶす方向に動いてきた。日本の都道府県にせよ市町村にせよ、そこには民衆の願いにそってできあがってきた多様なしくみがある。とりわけ大阪市は戦前の関一市長の為政はじめ、先駆的な施策の伝統をもっている。また新憲法下では市長と市議会の選挙をくり返し、市民の願いを積みあげてきた歴史がある。それを崩そうとするねらいが、露骨に見えるのが今回の「構想」だ。危険なのは合理性があるように見せかけている作戦だ。

中村寿子 (阪南大学・非常勤講師) 水環境学
水道は、最も公共性が高い地域独占のライフラインであり、住民は選択不可能である。水道事業を規定する法律「水道法」には、「原則として市町村が経営する」と記されている。ただし、公営が良く民営はだめと決めつけるのは早計である。今までも大阪市水道局には、種々の批判される事象があった。しかし、大阪市水道局の「素案」を見ると、民営化の利点として挙げるのは、「生産性効率性を上げる」「経営の自由度をあげる」「アウトソーシング、契約社員、短期雇用…の活用」「海外への展開」等である。公共性を投げ捨てて利潤を追求するもの、と言わざるを得ない。大阪市が解体されて無くなると、必然的に大阪市水道局もなくなり、民営化される。

西川榮一 (神戸商船大学・名誉教授) 工学
大阪は気候・風土など有数の恵まれた条件にあり、大阪人はその環境を享受し、市民文化豊かな都市を発展させてきた。だが明治以降、煙の都と言われた工業開発、そして戦後の高度経済成長政策の中で、甚大な環境破壊や公害、生活破壊が引き起こされた。その影響はいまも続き、大阪は大都市の中でも過密な産業優先の過密都市、不健康都市と言われる状態にある。いま大阪が取り組むべき課題は、市民の協同によって、環境回復・再生可能資源利用・廃棄物極小化の持続可能な都市を目指すことであろう。しかし「大阪都」構想はこの課題と間逆の方向を向いている。それは、「大阪都」の首長が描く成長戦略を強権的に進めることを可能にし、産業はもとより教育や文化活動にいたるまで、成果主義で煽りたてる競争社会を目指すものである。これでは自然環境どころか社会環境をも破壊しかねず、大阪をリスク都市に陥れると危惧される。「大都市特別区設置法」は「大阪都」構想実現を支援するために急遽議員立法でつくられた法律である。この法律に依拠する「大阪市廃止特別区設置案」は「大阪都」構想への扉を開くものであり重大な問題があると言わざるを得ない。

西寺雅也 (名古屋学院大学・教授(元多治見市長)) 自治体経営学
市民自治の観点からみて、現在の大都市制度が大きな課題を抱えており、改革を進めることが必要であることは論を待たない。しかし、今回大阪市を解体し、あらたに5つの特別区を設置しようとする動きは市民自治を拡充することを目指すことを目的とせず、むしろ後退の虞がある。それというのも「解体」は大阪市の持っていた権限や財源の府への集中を進める一方で、やせ細った特別区をつくることになるからである。
後戻りできない拙速な選択をすることのないよう、大阪市民に期待したい。
いま考えるべきは、大阪市としての市民自治の拡充である。

西堀喜久夫 (愛知大学・教授) 地方財政学
戦後の大阪は、幾度となく経済地盤沈下が叫ばれ、その都度臨海開発や都市再開発を進めてきたが、むしろ都市の魅力を低下させてしまった。その後はオリンピック誘致や集客都市政策に飛びついたがうまくいかず、経済不振が続いている。
大阪府を含む大阪経済の再生には、大阪市がこれまでの経済産業開発政策の総括と調査、研究を行い、社会のニーズと取り組みを発掘し、サポートするような都市経済政策とその実行が必要なのであって、大阪市を廃止し、大阪府に一体化したからできるものではない。
市民は、全国に遅れること10年、1898年にようやく官選知事の大阪府から自治権を確立して、今日につづく大阪市があることを忘れてはならないのではないか。

西村 弥 (明治大学・准教授) 行政学、公共政策学
東京では都が直営している地下鉄、バス、水道について、なぜか大阪都構想では民営化するとしている。東京で民営化の予定はない。民営化はそれ自体が複雑な政策パッケージである(分割の可否、上下分離か上下一体か、民間委託か完全民営化か、株式の保有比率・売却スケジュールはどうするか、組織編制はどうするか、役職員の職制・待遇はどうするか等々)。そうした複雑な政策パッケージが、「大阪都構想」というさらに膨大な政策パッケージと「抱き合わせ販売」されている点に危惧を覚える。大阪市民の「足」や「食の安全」に関する重要事項について、大阪市民は慎重に検討する機会を奪われてしまっているように見える。

野口義直 (摂南大学・准教授) 経済学
大阪都構想のもとで行われる市民のセーフティネットでもある「保育園」などの民営化は,住民サービスの低下につながることが必至であり,これは行政の責任放棄と言えるのではないだろうか。

波床正敏 (大阪産業大学・教授) 交通計画、国土・都市計画
低迷する大阪を何とかしたい,その問題意識は正しい.だが,大阪の長期衰退の原因は,西日本における中心性の低下,国土の双眼構造の崩壊に他ならない.府と市をくっつけて都を名乗ればそれで解決できるようなレベルではない構造的な問題が既に発生しており,数十年単位でこの先,大阪(および近畿一円)が苦しみ続けるのではないかと心配している.だが,残念ながら現時点では内向きの議論ばかりなのが悲しいところ.
首都圏と関西圏では新幹線をはじめとする広域交通インフラの差が歴然としており,これが西日本における中心性を失っている主因である.ドーナツは周辺があるからドーナツだ.周りがなければ,どこが中心かわからない.

早川和男 (神戸大学・名誉教授) 環境都市計画
「都構想」は市民社会の基盤を弱体化させる。自治は制限され、安全、医療、福祉、生活環境の水準は低下し、公営住宅入居も一層困難になろう。政令指定都市である大阪市の廃止は、市民の暮らしを損なうことになる。

晴山一穂 (専修大学・教授) 行政法
藤井聡「大阪都構想 橋下市長の恫喝には屈しない」(文芸春秋5月号)を読み、大阪都構想の問題点と橋下市長・維新の会による藤井氏への攻撃のひどさがよくわかりました。まさに構想自体の内容上の異常さとそれに反対する者への攻撃の異常さ・低劣さが相通じるところがある感じました。大坂府・大阪市自身の問題であると同時に、日本の民主主義にとっての重大事態と痛感します。法的問題も含めて広く府民・市民の方に事の本質が伝わるよう切望しています。

樋口泰一 (大阪市立大学・名誉教授) 化学
「大阪都」構想と称される亡霊案が蘇り、住民投票されることになった。
世界に誇れる百数十年の歴史を有する大阪市が解体・廃止され、大阪市大も消滅へ。市大の理系は理学的「理工学部」として発足し、これまで、物理の南部陽一郎氏、医学の山中伸弥氏など、ノーベル賞受賞者が、また、世界で初めて金属錯体の絶対配置(構造)を決定し、国際的に高い評価を受けられた齋藤喜彦氏、有機電子論とビニル重合論を国内の理工薬系学生に普及した井本稔氏などが活躍され、日本のMITと評された。世界大学ランキングに公立で唯一入り、首都大学東京の名は有りません。「本当に強い大學」には市大と府大が共にランキングされている。
この活力と研究の場が引き継がれている。統合で失ってはならない。大阪の為に共に発展させるべきである。

広川禎秀 (大阪市立大学・名誉教授) 日本近現代史
5月17日の住民投票(「大阪市における特別区の設置についての投票」)は、政令指定都市・大阪市を廃止し、大阪市の権限と財源を大阪府に吸収するための大阪市民の「同調」調達の策略である。大阪市民が、歴史と文化、伝統ある大都市自治体を失う痛手ははかりしれなく大きい。
大阪市の廃止後にできる5つの特別区は、独自財源が大幅に減り、たとえ区長を区民投票で選んでも、「区」は権限も財源も縮小され、地域の発展と福祉を支えてきた「市」の予算が維持される保証はまったくなく、いっそう市民サービスが低下せざるをえない。
大阪市大と大阪府大の統合計画でも財源の保障計画がまったく欠如し、現実に、年々の予算削減で研究教育に大きな支障が出ている。大阪の経済的再生は、もともと行政制度の改編で解決する問題ではなく、橋下・維新による大阪市解体(「都構想」)でかえって大阪の経済的地盤沈下が進む可能性が大きい。
大阪には、関一をはじめ近代大阪の発展に力を尽くした名市長が多いが、「大阪都構想」と大阪市の廃止・解体計画は大阪の歴史に汚点をのこす愚挙であり、橋下徹市長はそれによって歴史に名をとどめることになるかもしれない。

藤井えりの (岐阜経済大学・専任講師) 地方財政学
大阪都構想が実現すれば、住民のくらしに直結する多くの事業の運営が一部事務組合に移行されることとなりますが、国民健康保険事業もそのひとつです。これまで、大阪市は国民健康保険事業の運営については独自事業として財源を充当することで、被保険者の保険料負担の抑制が図られてきました。しかし、一部事務組合によって運営されることになれば、これまでと比べて住民の要求は反映されにくくなり、地域医療が後退する可能性が懸念されます。

保母武彦 (島根大学・名誉教授) 財政学・地方財政学
「大阪都構想」は、「広域行政の効率の向上」などを目的として大阪市を解体し、現在の24区を5区に再偏しようとしています。そうなれば、住民の声は行政に届きにくくなり、「住みづらさ」が蔓延する失望の都市に変わってしまうでしょう。その苦い経験をしたのが、農村など地方で行われた「平成の大合併」です。「広域行政の効率の向上」という甘い言葉に乗せられて合併した市町村では、役所は遠い存在となり、住民の声は行政に届きにくくなってしまいました。大都市と地方という違いはあるが、行政と住民との関係では同じです。いま大阪市で必要なことは、住民と行政をつなぐパイプを強く、太くして、住民の声が届く行政の仕組みをつくることです。

堀 雅晴 (立命館大学・教授) 行政学
維新のいう「大阪都構想」は「大阪市」をリストラして、中身のはっきりしない「特別区への格下げ」という“粗悪品”である。大阪「都構想」の原点は何だったか。橋下知事時代にまとめられた「大阪にふさわしい新たな大都市制度を目指して」(大阪府自治制度研究会、2011年1月)はいう。「大阪の問題の本質は、府市間の二重行政の存在というような表層的な問題」ではなく、「言わば『二元行政』とも呼ぶべき状態」(p.1)である。従って従来の「都区制度、政令指定都市制度といった一律の制度」(p.3)では間に合わず、「府市が住民の立場に立って『大阪という大都市にどのような制度形態が最もふさわしいのか』協議を重ね、全体像を一致させること」(p.43)が原点である、と。

本多哲夫 (大阪市立大学・教授) 地域経営論・中小企業論
二重行政問題が取り上げられる際に、大阪市と大阪府の商工行政、とくに中小企業支援機関の二重行政の問題がしばしば指摘されてきた。しかし、二重行政問題はイメージだけで語られ、実態を踏まえたうえで議論がおこなわれているとはいえない。大阪市と大阪府の2000年代の商工費の実態、ならびに、市と府の中小企業支援機関の支援の実態を分析してみたところ、従来から意識的に棲み分けが行われており、深刻な二重行政問題は発生していないことが確認された。一見、重複しているようにみえる支援であっても、都市に立地する膨大で多様な中小企業の支援の質と量を確保するために重要な支援であるケースが多い。また、市と府の支援機関が互いの切磋琢磨によってサービス水準を高度化させてきたことも忘れてはいけない。漠然としたイメージだけの二重行政批判にもとづいてリストラの発想による商工行政・支援機関の一元化が図られる場合、企業支援の水準が低下する恐れがある。

真山達志 (同志社大学・教授) 行政学
地方制度や自治制度を大きく変えるには、十分な検証と議論が必要である。誰にとってのどのような問題があるのか、その原因や背景が何であるのかを分析し、問題を解決する必要性に合意が得られたなら、複数の解決手段・手法を比較検討するというプロセスを経て、はじめて改革が可能となる。このようなプロセスが欠如しているだけでなく、中身も曖昧で怪しげな「『都』構想」なる案に対して住民投票をしても良いのだろうか。一見、民主的な印象を与える住民投票でカモフラージュしているが、今の大阪市の状況は、手続的にも内容的にも民主主義と地方自治の危機である。

三浦哲司 (名古屋市立大学・准教授) 地方自治論
言葉だけが独り歩きし、一時のムードで大阪市のあり方が左右されることになった現況を危惧します。地方自治論の立場からみれば、市民に十分理解されているとは思われない「大阪都構想」とは、はたして誰のための改革なのかという疑念を抱かざるを得ません。

水谷利亮 (下関市立大学・教授) 行政学・地方自治論
二重行政には、「悪い二重行政」と「良い二重行政」があります。政令指定都市と府県の間の「悪い二重行政」については、実際のほとんどの現場では、両者が議論の場を設けて、個々の事案ごとにどちらに・どのように仕事と負担を任せるのかを手間と時間をかけて調整し、対応しています。他方で、自治体が地域の多様な課題に独自に対応することができる概括授権方式と融合型の地方自治制度のもとで、政令指定都市などと府県が、同じ政策領域で両者が重複・複合して、全体として協働・補完することで圏域の「自治の総量」(自治の量と質)を維持し高めている「良い二重行政」といえる現実もあります。
「大阪都構想」は、議論や手間をかけずに「悪い二重行政」をなくすという名目で、大阪市と大阪府が協働・補完することで「大阪」において「自治の総量」を高めている現実と今後の可能性をつぶしてしまうものです。
制度を変えれば、政策が良くなるわけではけっしてない。議論をして手間ひまをかける民主主義を大切にして「大阪」の生活と文化と街を発展させる点からも、大阪市を廃止・解体する「大阪都構想」には重大な問題があります。

宮入興一 (愛知大学・名誉教授) 地方財政学
「大阪都構想」の、「二重行政の無駄を省く」という口実は隠れ蓑に過ぎません。その本質は、市民の命と暮らしの砦である大阪市の解体にあります。大阪市を解体し、市民の参加機会と住民自治を奪った上で、市の財源をとりあげ、財源を新規の大規模開発に投入し、市民福祉を踏みにじろうとするもので、絶対許されません。

宮本憲一 (元滋賀大学学長・大阪市立大学名誉教授) 財政学・都市経済学
大阪市が大阪都になるのではない。大阪市はなくなる。そして市民ではなく、北区とか南区とかいうどこにでもある名称の特別区民になる。大阪府は法律改正をしなければ都にならない。仮に大阪府が大阪都になっても府県制を超えるような機能を付与されるのではない。大阪都になれば政府が第二首都として、中央官庁の移転、例えば、経産省や国土交通省などを移転するということではない。府が都に代わっても、国税の一部が特別に大阪に配分されるのでもない。橋下構想のカジノ観光でも大阪都にならぬとできぬのでなく、政府は横浜市とともに大阪市にも認めるというのである。このカジノ構想は「下司の街」と批判されてきた大阪の都市格をさらに落としてしまうであろう。
大阪都構想はコップの中の争いで、大阪市と大阪府の権限・財源の配分で、国の権限や財源などが委譲されるということではない。また大阪都になれば、80年代以降急激に東京に移転した大阪資本の本社が復帰してくるというのでもない。また他地域から企業が流入してくるということでもない。この企業の流れは行政区画の問題と異なる。大阪都構想によって東京一極集中が是正され、大阪経済が東京経済と同じような機能を持つようになるということはない。
大阪市民は大阪市がなくなり、どこにあるかわからないような北区民、湾岸区民となってよいのであろうか。大阪市は京都市や神戸市と並んで、関西地区経済の母都市であり、文化の中心であった。これは東京圏のように東京23区一極集中とは違って、最も望ましい3種3様な多様な特色を持った大都市圏の姿であった。その大阪市がなくなれば、関西の特色がなくなるだけでなく、日本の誇る多様な都市連帯の大都市圏がなくなるのである。知事は大阪都が新しい大都市制度というが、これは都市自治体論なき空論である。広域行政体で、市民生活の現場の行政の経験のない大阪府が名前は大阪都になっても都市ではない。大阪地域は京都市や神戸市に比べて都市力や都市格ははるかに低いものになるであろう。

宗川吉汪 (京都工芸繊維大学・名誉教授) 生命科学
大阪は庶民の町、庶民の自治こそが大阪の特徴です。首長の権限を大きくする都構想は大阪にはふさわしくありません。いま大阪に求められているのは、庶民の暮らしを守り、伝統を守り、未来を展望できる都市計画ではないでしょうか。

森原康仁 (三重大学・准教授) 経済学
移行にともなう莫大なコストだけははっきりしているにもかかわらず、「構想」が実現した場合の住民にたいする「効果」はきわめてあいまいです。政策の体をなしているとは到底言えません。

八幡一秀 (中央大学・教授) 中小企業論
「大阪維新の会」が大阪府政、大阪市政を牛耳る中、府市の中小企業政策は大きく後退しました。府レベルで「商業関連予算」が2007年度17億円であったものが2014年度にはほぼ3分の1の6億円に削減されました。「ものづくり支援関連予算」でも同期間に5.2億円から1.8億円へと激減しています。橋本市政下で中小企業関連予算は2011年から2015年の4年間で4割も削減されてきています。大阪府市の中小企業は地域経済振興の主役です。その中小企業を応援することこそホンモノの自治体の役割なのです。府市政をホンモノに変えることは住民だけができるのです。

山口英昌 (大阪市立大学・名誉教授) 食環境科学
政令指定都市である大阪市を5つの特別区に解体する大阪都構想は、財源の低減により都市機能を低下させ、大阪市の発展と市民の暮らしを困難にするものだ。市と府の2重行政による弊害が過度に喧伝されるが、根拠はない。そもそも、大阪市・府の経済的地盤沈下は、東京への一極集中と、地方への財源投下の欠如によるもので、都構想によって解決できるものではない。

大阪都構想は、大阪市の解体に他ならない。大阪市は自治権を失い、大阪府によって直接統治される。都市計画決定をはじめ、多くの権限を大阪府に吸い上げられる。こんなものが地方自治の伸長に役立つはずはない。

山崎文徳 (立命館大学・准教授) 技術論
大阪府には海抜0メートル地帯が40km2存在し、108万人が生活しています。災害は、自然現象に社会的要因が加わって発生・拡大します。大都市の問題(市街地の密集、超高層ビル、地下街)や地理的な脆弱性に適切に対処し、二重・三重の対策をすることで、被害の発生や拡大が防げるのです。
しかし、橋下・維新の会のもとでは、災害対策は重視されず、予算は削減されてきました。「都構想」でも、災害対策や教育・医療・福祉などの住民サービスを削り、大阪市民から吸い上げた財源をカジノや大型開発に投じようとしています。
また、私の母校である大阪市立大学は、関一大阪市長のもとで1928年に日本初の市立大学として設立されました。それぞれに個性をもつ2つの大学を統合することは、両者のよさをつぶしかねず、市民・府民にとっては損害となります。歴史と伝統をもつ大阪市を廃止する特別区の設置には重大な問題があるといわざるをえません。

山田 明 (名古屋市立大学・名誉教授) 地方財政学
歴史ある大阪市が消滅することは、日本の大都市制度の根幹を揺るがす。他人事ではなく、黙っておれない。大阪市という自治体が一体的に行っている大都市特有の行政サービスの多くが、「大阪特別区事務組合」で実施される。行財政運営は混乱し、地域住民生活への深刻な影響、しわ寄せが懸念される。東京都制は戦時下に誕生したが、今でも様々な問題を抱えている。その一つが財政調整制度である。大阪は東京に比べ財政基盤が脆弱であり、財政調整は困難をきわめる。ころころ変わる生煮えの大阪都構想の賛否を問う住民投票だが、今回ほど棄権は危険なことはない。ここで大阪市廃止が決まれば、もう後戻りできないからだ。

横田 茂 (関西大学・名誉教授) 地方財政学
大阪都構想は、大阪市を5つの特別区に分割し、現行の税収の大きな部分を府に移管する結果、特別区の自主財源がきわめて貧弱になります。そして、新たに設置される財政調整資金の配分をめぐり府と特別区および特別区相互の間で、絶えざる紛争が生まれる可能性があります。このため、大阪市民が現在享受している市民サービスが解体され、特別区の間で格差が発生し、低下してしまうことを危惧します。

和田 武 (立命館大学・元教授) 環境学
『都構想』は大阪の歴史、伝統、文化等をも破壊する内容を含んでいます。
大阪府立大学と大阪市立大学の統合やバイオサイエンス研究所の廃止等も目論まれているようですが、大阪の誇るべき知的財産を失うことになります。市民生活についてはどうなるのか、詳細は不明な点だらけです。このような『都構想』はとうてい容認できません。

和田幸子 (神戸市外国語大学・元教授) 国際経済論
大阪都が誕生し、二重行政がなくなると言われていますが、より具体的には大阪府立大学と大阪市立大学が統合するとか、市立病院がリストラされるなどこれまで長年築き上げてきた科学や文化の蓄積、生活のあり方などが、「合理化」や「効率」の名のもとに切り捨てられるのではないかとの危惧を抱きます。あまりにも「効率追求」に走る事は社会を活性化させる事にはならないでしょう。

和田野晃 (大阪府立大学・名誉教授) 農芸化学
大阪都構想自体の内容は危険性も利点も理解できていません。ただし、その構想実現にたいする方法自体はどうも拙速に見えます。