京都大学 都市社会工学専攻藤井研究室

京都大学大学院工学研究科 都市社会工学専攻
交通マネジメント工学講座 交通行動システム分野

藤井聡:日本を守るためには,強靱化がホントに必要です.~短期連載(全四回) 「強靱化」で勝つ! (その1)~

自由民主党機関誌 『自由民主』2518号,平成24年7月24日号

短期連載(全四回) 「強靱化」で勝つ! (その1) 

日本を守るためには,強靱化がホントに必要です. 

 

京都大学大学院教授

同大学レジリエンス研究ユニット長

藤井聡

 

今,大手メディアでは,自由民主党が「国土強靱化」を次の総選挙の選挙公約の重要な「柱」とする方針を固めたという事が報道されている.同時に何十回にも及ぶ党内での議論を踏まえて国土強靱化基本法案がまとめられ,国会に提出されだということも伝えられている.

筆者が考える「強靱化」の基本思想は,次の3要素である.

 

【「強靱化」の基本3要素】 

①日本は今、「超巨大地震の連動」の危機に直面している!(※ 最悪,東日本大震災の被害の10~20倍規模) 

②その危機を乗り越えるために今,「大規模な公費」に基づく総合対策が不可欠!(※ 年間10~20兆円規模で10年間)

③その結果,経済も大きく成長し、日本中が「豊か」になる!(※ 10年後に名目GDPが600~900兆円規模) 

 

この度の基本法案は,この内の2つ目の「総合対策」についての基本的な考え方がまとめられたものと解釈できるだろう.

この動きが生まれたのは(ひとえ)に,この三要素の①の超巨大地震の連動の被害が,我が国の「存亡」に直結する程に激甚だとの認識があるからだ.つまり,10年以内に生ずる見込みが濃厚な首都直下地震も.遅くとも20年以内に生ずることが懸念されている南海トラフ地震(東海・南海・東南海地震)も,(あえて口語的に言うなら)我が国にとって「シャレにならない」程に誠にもって「激ヤバ」な代物だからだ.
まず,死者数で言うなら最悪,首都直下地震で15万人,南海トラフ地震では40万人と推計されている.経済被害について言えば,最悪,前者は300兆円超,後者も500兆円規模になる可能性が指摘されている.つまり我が国はこれらによって,最悪,800兆円の被害と50万人以上の死者という,文字通り「外国との全面戦争」に匹敵する程の激甚被害の危機に晒されているのだ.

この最悪の悪夢の背景には,何とも愚かしい事に,戦後日本が巨大地震が起こるまさにその場所に,東京・大阪・名古屋を中心とする日本全体の7割にも上る経済規模を誇る大メガロポリスを作り上げてしまった,という事情がある.

この状況を見てとれば,腹の中では国民のことなぞ全く気遣わないヒトラーまがいの俗物や,大局観を持たぬ「純粋まっすぐ」なだけの愚者ならいざしらず,大局から時局を眺め,国民を(おもんぱか)る真っ当な政治家の先生方ならば,今如何に振る舞うべきかは明々白々だろう.

筆者はその答えこそが,この度の自由民主党の方針なのではないかと僭越ながら感じている.大手メディアではこれだけ公共事業が叩かれ,財政危機が日々喧伝され,ポピュリズムが席巻するこの平成の御代で,あえて国土強靱化を公約に掲げんとするのは偏に国民を救い,日本を守らんとする一念があったればこそとしか,解釈できない.

だとするなら国を救うために今必要なのは,「先祖返り」だの「バラマキ」だのとのあらぬ誤解を受けかねぬ国土強靱化の「真意」と「真実」を徹底的に国民に伝え続けることの他に何もない.そしてその上で国土を強靱化するための「強靱なる政権」の樹立を期さねばならない.さもなければ,仮に大衆に迎合しながら政権を樹立したとしても国土は脆弱なまま放置され,巨大地震によって夥しい数の国民が死に,激甚な経済被害によって世界の三流国や四流国に凋落することは避けられぬのである.

いわば,次の総選挙はこの国を守るための最終決戦なのだ.つまり,文字通り,「強靱化で勝たなきゃ意味がない!」のであって,ここに,本連載のタイトルの真意があるのだ.