日刊ゲンダイ,2012.10.05
日本経済の「虚」と「実」~新聞報道に騙されるな!~⑭
「維新」を捨て去り、失われた20年にケリをつけるべし
「維新の会」の橋下氏は、その「党綱領」として維新八策を公表した。そして彼は今、次期総選挙の候補者を大量に募っているが、その際の基準が、この「八策」に完璧に合意するか否かという点にあるのだと言う。
では、その「八策」の内容がどういうものかと言えば、その内容を詳しく知っている読者は限られているだろうと思う。なぜなら大手メディアは橋下氏の刺激的な発言を日々取り上げはするものの、彼の政策内容はほとんど真面目に報道されてはいないからだ。
筆者はそうした「八策」の内容をつまびらかに検討したのだが、この内容をそのまま実行してしまえば、日本経済は大打撃を受け、凄まじい勢いで我が国の国益が毀損していくことは「巨大な炎を間近で眺める」よりも明らかだと断定し得るような代物であった。この八策は要するに、驚くべき程に過激な「新自由主義」、より分かり易く言うなら「市場原理主義」に忠実に従って作られたものだからである。
改めて指摘するまでもないが、完全に不自由な市場では国民は幸せにはならない。ある程度の自由は必要だ。しかしだからといって兎に角自由にすればいいのかと言えばそうではない。国民の安寧と幸福のためにはある程度のルールが必要だ。さもなければ「弱肉強食」が過激に進行し、数%の金持ちだけに冨が集中し、それ以外の大多数の国民は「貧しく」なるからだ。
特に教育や福祉、医療には、一定のルールが無ければ国民の安寧や幸福は著しく毀損する。所得の低い人々が皆、まともな教育や福祉を受けられなくなるからだ。事実、自由を過剰に尊重しすぎたアメリカでは、まともな医療や福祉が受けられない国民が大量に存在しているのであり、それが長年の国家的大問題となっている。
しかし「八策」はそんな教育や医療も含めて、兎に角全ての領域の仕組みやルールをグレートリセットして可能な限り自由市場に委ねんとするものだ。
これで国民が幸せになるはずがない。例えばかの小泉・竹中による構造改革によって格差社会がもたらされ、多くの国民が不幸な人生を歩むに至ったという事実を理解している国民は多かろうと思う。橋下八策はそんな構造改革をより過激化せんとするものなのだ。事実、八策の策定にその当の竹中平蔵氏が関与していることからもそれは明白だ。
つまり「維新」に対してどういう態度をとるのかという問題は、日本に「20年」を失わせしめた「改革路線」にどうケリを付けるのかという問題でもあるのだ。
ついては次週以降、より詳しく、八策の中身に立ち入りつつ、「維新」ひいては「改革」が如何に日本に深刻な被害をもたらすのかについて一つずつ検証していくこととしたい。