藤井聡:日本を守るために,原発再稼働の道を真剣に探るべし

11月 30, -0001 by 未分類 No Comments

日刊建設工業新聞・所論緒論、2011.6.11

日本を守るために,原発再稼働の道を真剣に探るべし 

 

京都大学大学院教授・同大学レジリエンス研究ユニット長 藤井聡

 

日本では今,福島原発事故を皮切りに徹底的な電力会社叩きが進められ,ついに日本国内の全原発の操業が停止するに至った.

そんな中,メディアに登場する有識者達や彼等を「ブレイン」として抱えている一部の首長達は「電力会社が隠している埋蔵電力は膨大にある」「自然エネルギーで何とかなる」などと(うそぶ)きながら「原発なんか無くても大丈夫」と触れ回っている.

無論,原発に懐疑的な目を持ち始めた一般の国民の多くは,そう言われれば「そうなのかぁ」と信じたとしても致し方なき所だろうと思う.

しかしこの手の話は,平成日本の至る所で散見される度し難く愚かしい悪質なウソ話の一つにしか過ぎない.消費税増税論にしても,TPP推進論にしても,公共事業悪玉論にしても,メディアに登場する有識者達は客観的な裏付けが乏しいあるいは一切無いような妄言を繰り返しているが,「原発なんか無くても大丈夫」という主張もまた合理的根拠などほとんど見いだせない虚言(そらごと)にしか過ぎない.

そもそも,①節電には限りがあり,②自然エネルギーの十分かつ即時の供給量確保は絶望的であり,③埋蔵電力をどれだけかき集めても十分量を確保することが不可能であることはいずれも否定しがたい真実だ.それ故,原発を止めるなら火力発電を増やさざるを得ないのであり,その結果,大手メディアでも報道されているように我々は少なくとも3兆円程度の火力発電のための燃料を外国から購入(輸入)せざるを得ないのだ.

これがどれだけ大きな問題なのかを理解している国民は少ないのだろうが,それは深刻な国力毀損をもたらす.

第一に,電気料金は値上がりせざるを得ない.そうなれば家計が痛手を被るばかりではなく,国内産業が大きな打撃を受け,その国際競争力が低下し,海外流出に拍車がかかり,結果,倒産や失業による不況が加速するだろう.

第二に,電力料金が値上げされれば,先の有識者達や一部の政治家達は激しい批判を電力会社に差し向けるだろう事は火を見るよりも明らかだ.そして電力会社は(さながらIMFによって基金を投入された発展途上国のように)様々な改革を強いられ,電力会社の組織力は大きく低下するだろう.結果,電力会社が長い歴史を通して安定供給のために築き上げたシステムも企業風土も毀損いくだろう.そうなれば,電力供給が不安定化し,「世界一の停電低頻度」が維持できず,巨大な社会的費用が発生することとなろう.

第三に,石油等の3兆円もの「海外からの購入」が増えれば,当然ながら,その分のGDPが低下する.最低でも年間3兆円,その負の乗数効果も含めればその2~3倍ものGDPが低下する.しかも,日本がそれだけのエネルギーを買えば,原油等の価格は高騰し,最悪で年間10兆円程度の経済ダメージを受け続けることも十分に想定内だ.例えば政府はTPPの経済効果を「10年で2・7兆円」と喧伝していたが,そんな推計値の「何十倍」もの被害を我が国は原発停止によって被ることとなるのだ.

第四に,石油等を購入すれば,ただでさえ高いエネルギーの海外依存度が,さらに向上する.そうなれば,例えばホルムズ海峡の危機が現実化した時の日本の混乱は極限にまで高まることとなろう.

もちろん我々は原子力の恐ろしさを嘗めてはいけない.しかし,エネルギー問題それ自体も嘗めてはいけないのだ.そもそも,第二次大戦への日本参戦の最終的決定因は石油問題だったのだ.だからこそ我々はいい加減,幼稚なテレビタレント達の戯れ言に振り回されるのを止め,原発問題に真正面から向き合わねばならない.その上で,原発自体の安全対策を徹底的に進めながらその再稼働の道を真剣に探らぬ限り,日本国家が取り返しの付かぬ状況に追い込まれるのは,誠に遺憾ながら,明々白々なのである.