藤井聡:『救国のレジリエンス』読書会~ご参加の皆様へ
2023.07.05
平成24年6月9日
『救国のレジリエンス』読書会 ご参加の皆様へ
京都大学大学院教授 藤井聡
この度は拙著「救国のレジリエンス」を課題図書に挙げていただき、誠にありがとうございました。本書は、冒頭で記載しているように「日本はまさに今、明るい未来と暗い未来の分岐点に位置している。本書では、明るい未来を選んだ時にどうなるのかを、とりまとめたい」という趣旨でした。この趣旨をご理解いただきながら、お読みいただいた方がどれだけおられるのか…..心許なく思いますが、それも、著者の力量不足故でしょう。
いずれにしても、人間、だれでも努力が無ければ死にます。家族も地域もまちも国も、努力がなければ崩壊し、死滅します。それを唯々諾々と受け入れるかどうかは、その人の自由意志に依存しているのだとしても、わたしは、死にたくないと思います。自分が所属している組織や地域や国は、崩壊して欲しくない、死滅して欲しくないと思います。
しかし、わたしは、そう「思わない」人々が、この国にはたくさん存在していることを「知って」います。もちろん、そういう人々に、「死んでもいい、組織や国が死滅してもいいと思いますか」と質問すれば、「そんなわけないだろ」と答えるに決まっていることも「知って」います。しかし、それは、単に口先だけの言葉であって、彼等は本当に、生きていこうという意志を強く持ってはいないのです。だから、周りに流され、世論に流され、状況に流され、特に自らの意志の力で生きていこうとはしないのです。そういう人間が、年齢を問わず、増え続けています。
本書は、そういう人間のことを、心の底から軽蔑するものです。それ故、本書に触れた、軽蔑される側の人々は、アレルギーを感じるかもしれません。「上から目線の本」だと、イライラとするかもしれません。
でもそれはそれでいいのです(それはいわば小島よしおの「そんなのかんけーねー!」というやつです)。
本書は、「生きていこう」とする「努力」を重ねる「意志」のある一部の日本人「のみ」に対して書かれた本です。そして、共に、生きていこうと呼びかけようとした本です。その筆者の企図が成功したか否かは、甚だ心許ないところですが、もしも、それをお感じいただけた読者がおられたとするなら、決して、本書を「上から目線の本」と感ずることはないのではないかと思います。そして、共にこの国を救うために(そして、自らが生きる意味のある生を生きるために)自らに何ができるかを、考えていただける….ということもあり得るのかもしれません。
いわば本書は、そういう方々に対する長い「手紙」として、筆者が勝手に書いて、勝手に本屋さんに置いてもらう手配をした、という次第です。本書を手に取り、お読みいただいたということは、この何とも恥ずかしい行為にお付き合いいただいた、ということであります。
ついては、改めて本書を手に取っていただいた方々に御礼申し上げたいと思います。
ありがとうございました。
藤井聡