藤井聡:運輸と経済『「強靱化」の基本法の策定を急ぐべし 』(投稿中)より抜粋


運輸と経済『「強靱化」の基本法の策定を急ぐべし 』(投稿中)より抜粋 


京都大学大学院教授・同大学レジリエンス研究ユニット長 藤井聡


本稿は、上記原稿の一部「抜粋」である。全文は、「運輸と経済」7月号をご購入願いたい。


「国土強靱化基本法」に見る希望

──とはいえ,この国にもう未来などない,というわけでもない.

我が国にも,確かに「希望」は存在している.

平成24年6月4日,本稿にて論じている社会資本整備の「施設効果」「金融効果」そして「事業効果」の三つを見据えた「基本法」として,「国土強靱化基本法」が議員立法で国会に提出された.この基本法は,「社会資本整備」の考え方「のみ」をとりまとめたものなのではなく,これから迫り来る首都直下地震や東海・南海・東南海地震に対して,日本国家としてどの様に立ち向かい,国家としての「強靱性」(レジリエンス)を確保するのか,ということを俯瞰的な視点からとりまとめた,文字通りの「基本法」である.(中略)もしもこの基本法が成立すれば,現在の政府が制定している「社会資本整備重点計画」にも大きな変更が加えられる事になることは間違いない.なぜなら,国土強靱化基本法はその性質上,現状の社会資本整備重点計画の「上位」に位置づけられるものとならざるを得ないからである.

(中略)

今,日本国家が置かれている状況を大局的な視座から眺め,何としてでも「強靱化」による,

1)適正な社会資本整備に基づく「防災・減災対策」と,

2)適正な財政金融政策に基づく「デフレ脱却」,

を果たさねばならぬと得心した日本国民は,この強靱化に向けた「潮流」が途絶えぬように,そして,より適正な流れへと改善しつづけるように,それぞれの立ち位置で,できる範囲の事を,一つずつ積み重ね続けていくことが求められているのである.

そもそも,そうした「潮流」を形づくっているのは,一人一人の我々日本国民に他ならないのだ.万が一にもこの一点を見失った国民国家は,為すべき国土・財政・金融・産業・経済政策を推進すること能わず,ただただ自然の猛威とグローバル恐慌の荒波の中で漂流し,沈んで行く他に途はないのだ.


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