当研究室では,ITS (Intelligent Transport Systems)をはじめとした,交通や物流に関連する情報技術を活用して,交通流の解析,交通やサプライチェーンのネットワーク設計,交通管理制御手法や交通運用手法の提案や評価,自動車利用者・公共交通利用者・観光交通の行動分析などを行うことにより,都市や地域の交通問題の解決を目指しています.
下記が研究テーマの一部です.
以下に,いくつかの研究テーマについて,概要を説明します.
近年,大量のデータが,交通行動の分析に使用可能となってきています.例えば,ICカードデータは乗客の乗降を明らかにし,ETCデータは自動車ドライバーに関する情報を提供します.また,携帯電話のデータはいつどこにどのくらい人がいるのかを把握するのに役立ち,バスGPSデータからはバスの位置とサービスの均一性に関する情報が収集できます(下図は,GPSデータに基づいて図示した京都市内のバス路線).GPSやデジタルタコグラフによって収集されたトラックのデータは,トラックの経路やスケジュールを把握するのに有用です.さらに,都市内に設置された様々なセンサーによって収集された情報は,人々の歩行パターンの理解に役立ちます.
これらのデータを有効利用し,データに基づいて新しい分析手法を開発・適用して,交通行動を分析しています.
旅客や貨物は,交通ネットワーク上を移動します.それゆえ,交通ネットワークの最適設計は,都市や地域の交通問題の緩和・解決に有用です.ここで,例えば物流の観点から交通ネットワークを最適設計する場合,貨物交通の発生・集中・分布には,物資の発生・集中・分布,すなわち,物流需要が深く関係すること,さらには,物流需要が,サプライチェーンネットワーク上での製品や原材料の生産・取引・消費から派生することを考慮しなければなりません.
そのための一手法として,下図のようなネットワークを対象として,サプライチェーンネットワーク上での製品の生産量・取引量・価格・輸送量と,交通ネットワーク上の旅客と貨物の交通量を同時に算出する数理モデルの開発に取り組んでいます.すなわち,製品の生産・取引・消費の担い手である製造業者・卸売業者・小売業者・消費者,製品の輸送の担い手である物流業者,および,交通ネットワーク上の旅客の意思決定や行動を記述し,交通ネットワーク上での旅客交通と貨物交通の相互作用を考慮したモデルです.このような手法は,交通ネットワークとサプライチェーンネットワークの双方を考慮したスーパーネットワークモデリングと呼ばれます.また,最適化においては,大規模問題に適用可能なAI指向の方法論の開発にも努めています.
ICカードやGPS履歴などから集められた大量のデータは,交通ネットワーク上の旅客や貨物の移動をモデル化することにも役立ちます.そして理論モデルは,交通ネットワークの効率性について一般的な知見を得ることに役立ちます.
下図は,あるバス停において乗客の行動をモデル化したものです.新たに乗車する乗客の何人かだけが,バス内に空席を見つけることができることを表しています.このモデルをバス交通ネットワーク全体に拡張することで,例えば,バスのサービス頻度を改善することによる効果が明らかになると期待できます.また最近では,カーシェアリングや自転車シェアリング,共同配送などの交通形態が登場するとともに,自動運転のようなネットワーク上の交通流に影響を及ぼす技術的進歩に注目が集まっています.これらのことを考慮し,様々な交通機関を対象として,交通ネットワーク上の旅客や貨物の移動をモデル化することに取り組んでいます.
当研究室は,DARUMAプロジェクトを通じて他大学との共同研究を行っています.DARUMAプロジェクトについてはこちらを御覧ください