政府に回答願いたいTPPについての9つの質問(藤井聡)

「TPPをともに考える 地域シンポジウム」

2012年3月17日(土) 於:生田神社会館

主催:株式会社共同通信社 全国地方新聞社連合会

資料3

政府に回答願いたいTPPについての9つの質問

京都大学大学院・教授 藤井聡

 

(質問1)

JAのTPP反対の請願には衆参国会議員の過半数が紹介人になり、1150の地方議会が反対ないし慎重の決議をした中で、それを全て無視する格好で、昨年11月に交渉参加表明をしたのは、いかなる故か?

 

(質問2)

政府は、国会等でTPP交渉に於いて「守るべきものは守る」との答弁を繰り返しているが、「守るべきもの」とは何なのかを明らかにせよ(なお、交渉途上の段階で守るべきものを明らかにすれば守れなくなるので、回答できない、という回答は、絶対に承伏できない。なぜなら、その回答を承伏すれば、その承伏者はその時点で、守るべきものが何であるかの定義の全てを政府が任意に決定できることを「信認」することになり、かつそれ故に、いかなる合意の後でも、「守るべきものは守った」という答弁を「許容」することになるからである。しかし、本質問者はそういう信認も許容も断じてできず、かつ、本質問者以外の多くの国民もまた、同様にそういう信認も許容もできないと感じているに違いないからである)。

 

(質問3)

日本の国民皆保険制度を死守するのか否かを明らかにせよ。死守するのなら、具体的にその「死守する」という言葉が意味する内実を明らかにせよ(「なお書き」は、上記と同様)。

 

(質問4)

“瑞穂の国”と言われる我が国日本の象徴である“コメ農業”を死守するのか否かを明らかにせよ。死守するのなら、具体的にその「死守する」という言葉が意味する内実を明らかにせよ(「なお書き」は、上記と同様)。

 

(質問5)

「事前協議において、すべての製品およびサービスを自由化交渉の対象にすると表明した」という報道がなされている。これが事実だとしたら、国会及び国民への説明責任を果たしていないと解釈せざるを得ないが、この報道は事実か?

 

(質問6)

2011年9月8日から15日にかけて米国シカゴで行われたTPPの第8回全体会合にて、米国通商代表部(USTR)は「実りある精力的な話し合いが行われ、ほぼすべての分野で条文草案が整理されている」と述べている。同様に、2011年12月14日米国下院でTPPに関する公聴会にてマランティス米国通商代表部次席代表は「TPPへの交渉参加9カ国は、既に協定のほぼすべての章の統合条文案を策定している」と言明している。この状況の中で日本がTPP交渉に加わって、日本にとって有利なルールをつくることができると考えているのか?考えているとするなら、そう考えている合理的根拠を、十分な日本語能力のある全ての良識ある日本国民が理解しうるようなかたちで述べよ。

 

(質問7)

昨年の毎日新聞の報道(11月28日『TPP:政府、文書に本音 11月表明「米が最も評価」』)で、「米国がAPECで政権浮揚につながる大きな成果を表明するのは難しい。日本が参加表明できれば、米国が最も評価するタイミング。これを逃すと米国が歓迎するタイミングがなくなる」「衆院解散がなければ13年夏まで国政選挙はない。大きな選挙がないタイミングで参加を表明できれば、交渉に参加しても劇的な影響は発生しない。交渉参加を延期すればするほど選挙が近づき、決断は下しにくくなる」という文書を「政府」が作成していたと報道されている。これは「国民は反発するであろうが、米国の政権浮揚のためにTPP参加表明をAPECですべし」という現政府の意図を明確に示したものであるが、その解釈でよいか?そうでないと言うなら、上記報道文書には、どういう解釈が可能なのかを、十分な日本語能力のある全ての良識ある日本国民が理解しうるようなかたちで述べよ。

 

(質問8)

TPP推進の論拠の一つとして「TPPで物価が下がる」ということが主張されている。実際、海外の製品の値下げに加えて、TPPは日本経済の供給能力を押し上げ「デフレギャップ」を拡大することを通して、その結果デフレが促進される。そうしてTPPによって日本のデフレが促進されれば、失業が増え、国民の所得が下がり、さらに円高で輸出企業が苦境に追い込まれることになる。アメリカ市場の関税撤廃効果など、円高で吹き飛ぶ。

政府は、TPPには、以上に述べたような「デフレを促進し、失業が増え、国民所得が下がる効果をもたらす」という「懸念が存在する」ということ(繰り返すが、伺っているのは「懸念の存在」であり、その懸念が100%現実かするという「確信」ではない)を理解しているのか?もしそういう懸念はあり得ないと考えているとするなら、なぜ故に、「そういうデフレ促進懸念が、杞憂に過ぎぬ程の極めて発生確率の低い事象にしか過ぎない」と「断定」できるのか、知性ある合理的な経済専門家であるなら誰もが理解できるかたちで論理的に回答願いたい

 

(質問9)

最後に、農地の多い東北の復興が進んでおらず、東北の農業が原状回復の目途も経っていない中で、農業に対する悪影響が懸念され、東北市長会等が反対しているTPPの交渉参加を表明したのは、復興という最優先課題と矛盾する疑義が極めて濃厚である。TPPへの参加と、東北の第一次産業の復興をどう両立させるのか、理性的な全ての日本国民が理解できるようなかたちで、理性的かつ具体的に述べよ。

 

以上

補足資料1:補足データ
補足資料2:日本国民にとってTPPが「論外」である理由

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