藤井聡、『救国のレジリエンス』~列島強靭化でGDP900兆円の日本が生まれる ~

『救国のレジリエンス』

~列島強靭化でGDP900兆円の日本が生まれる~

藤井聡著 講談社

 

「あとがき」より

 

 高度成長期生まれの筆者の世代からしてみれば,「21世紀」といえば技術は高度に進歩し,貧困や格差といった色々な問題が概ね解決された何やら明るく楽しい未来でした.「ドラえもん」は21世紀からやってきたスゴイロボットだったし,80年代のハリウッド映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー3」に描かれた21世紀初頭の世界もまた,そんな明るい未来でした.

 しかし,現実に21世紀になった今,それは単なる「妄想」にしか過ぎなかったということを,誰もが理解していることだろうと思います.

 携帯やゲーム等の新しい技術は確かに普及した.しかしだからといって幸せになったと実感している人なんてほとんどいません.現実の21世紀の日本社会は格差が広がり,失業率は高まり,様々なコミュニティや絆がそこかしこで失われつつある,何とも暗い時代だったのです.

 そしてそれは日本だけなのではありませんでした.世界中の国々もまたそういう暗い時代に突入してしまったのです.

 リーマンショックに代表される経済危機が幾度も各国を襲い,アメリカもEUも失業率は10%という凄まじい水準にまで達しています.世界経済の牽引が期待されていた中国もまたいつバブルが崩壊してもおかしくないような状況に陥っています.そして今の世界は,リーマンショックと同様あるいはそれ以上の世界恐慌がいつ再発してもおかしくない様な様相を呈しています.

 しかしこんな凄まじい世界経済の混乱期にあるにも関わらず,日本は今,それが一切目に入っていないかのように,愚かにも,過激な自由貿易協定を経済混乱の渦中にある国々と締結しようと躍起になっています.

 恐らくは彼等は20世紀に多くの人々が「21世紀には何かきっといい事が一杯あるんだ」とお目出度く楽観していたように,「外国と仲良くすると何かきっと良いことが一杯あるんだ」とでもお目出度く楽観しているのでしょう.

 しかし実際には,デフレ不況にあえぐアメリカを中心とした国々と経済協定をどれだけ過激に推進したところで,日本にとって良い事なんてあるはずがありません.例えば万一,現政権のままで日本がTPP交渉からの離脱に失敗してしまえば,日本は圧倒的な政治力と交渉力を持つ米国のいいようにあしらわれ,取り返しの付かない状況に日本が陥ってしまうことは間違いないでしょう(筆者は自らの職を賭してでもこの事は断言できると言いうる程にこれを確信しています).

 それは「地震なんて来ないだろう」とタカをくくって何の対策もしていない間に巨大地震に襲われるようなものです.どうせ攻めてこないだろうとタカをくくって何の防御もしていない間に一気に経済的に侵略されれば,為す術もなく富や主権を奪われてしまうことは必定なのです.

 つまり,今日の日本が「脆弱な国」であるとするなら,その根底にあるのは全て,「そんなに心配しなくったって大丈夫だろう」と言う,馬鹿馬鹿しいほどに妄想的,病理的な「楽観論」だったのです.

 そんな「楽観論」に基づくお目出度い態度こそが,本書で何度も指摘した「平和ぼけ」と呼ばれるものの正体だったのです.そしてそんな「不道徳」極まりない平和ぼけに支配されているのが「戦後日本」なのであって,それこそが我が国日本を根底から蝕み,脆弱な国家へと凋落させ続けている元凶なのです.

 本書を一言で説明するとするならそれは,そんな「平和ぼけ」から日本国民が覚醒することができるなら,それを通して世界中の国々には絶対にまねできないような素晴らしい未来を手にすることができる───この一点を,様々な客観的証拠を紹介しながら描写しようとするものでした.

 はたしてそんな近未来を私たちが手にできるのか──その第一歩は,何度も繰り返すように,不道徳極まりない「平和ぼけ」からの覚醒なのであり,その上で,全ての日本国民の思いや願いに応え,日本列島の本当の強靱化を果たし得る真っ当な政権を,わたしたち日本国民の手で誕生せしめることなのです.本書がそんな明るい未来に向けた国民的取り組みに僅かなりとも貢献しうることがあり得るとするなら,それは著者としての至上の喜びであります───.

 

(※ なお筆者は本書の印税を放棄し,講談社を通して震災復興のために役立てていただくことで合意した)

 

 

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