極めて重大な意味を持つ総選挙

日刊ゲンダイ 2012年12月7日

日本経済の「虚」と「実」~新聞報道に騙されるな!~(24)

極めて重大な意味を持つ総選挙

京都大学大学院教授 藤井聡

 

今日の日本の不況は,極めて深刻にある.

長引く不況のために多くの中小企業が全国で悲鳴を上げ,売り上げがかつての半分や三分の一程度にまで落ち込んだ企業が日本中にあふれ返っている.各社は若者を雇う事ができないばかりか,ベテランの社員をリストラせざるを得なくなる状況に追い込まれ,倒産する企業も後を絶たたい.その結果,日本中に失業者があふれ返り,若年層に至っては,失業率は10%弱,すなわち10人に一人の若者が仕事をしたくでもできない時代となったのだ.

多くの仕事に就けずに生きる目的を見失った若者,リストラされた社員,倒産した会社の社長達は,自ら命を絶つ道を選び続けている.事実,日本が,今日に至るデフレ不況に突入した1998年,年間自殺者数は2万人から3万人へと一瞬で「一万人」も急増し,その後そのままの水準で推移している.つまりデフレ不況のために自殺者が「一万人」増え,それが「15年間」続いているのである.いわば,「デフレ不況は15万人もの国民を殺め続けている」と解釈できるのである.

こうした悲惨なる帰結をもたらすデフレ不況を,我々は止められないのかと言えば,そんな事は断じて「無い」.なぜなら「政府」という巨大なる存在が「本気」になりさえすれば,デフレ不況を止めること等決して難しいことではないからである.

すなわち,「増税」「TPP」「公共投資の削減」等の全国の民間企業をさらに「苛める」様な施策を全てストップさせ,全国の企業に仕事を与え,仕事を無くした人々に仕事を与えるための「大規模な公共投資」を(金融政策と共に)行いさえすれば,それでデフレ不況は終わるのである. そうである以上,デフレ不況であろうがなかろうがとにかく「増税すべし!」「TPPの交渉参加を!」等と息巻き,「公共投資は削るべきだ!」と叫ぶ様な政党が国政に関わるようになれば,我が国の不況はより深刻化し,より多くの国民が殺められ続けることとなるのだ. 我々国民は,その様な野蛮なる暴挙が政治の名の下に展開されることを断じて阻止せねばならぬ.この意味に於いて,今回の総選挙は,数万,数十万という夥しい数の国民の命を救うのかそれとも見殺しにするのかが問われる,極めて重大な意味を持つものなのである.

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