国益増進のための経済政策よりも「ふわっとした民意」に媚びることを最優先した醜悪な野合

日刊ゲンダイ 2012年11月23日

日本経済の「虚」と「実」~新聞報道に騙されるな!~(21)

国益増進のための経済政策よりも「ふわっとした民意」に媚びることを最優先した醜悪な野合

京都大学大学院教授 藤井聡 


今日の日本の「最大の権力者」は,総理大臣でもなければ霞ヶ関でもなく,どこかにいる影の支配者でもドンでもなく『ふわっとした民意』に他ならない.

この言葉は,日本維新の会の橋下氏による次のような(維新政治塾の塾生に対する)発言の中で口にしたものだ.

「頼れるのは声なき声『ふわっとした民意』だ.ものすごい応援になるが一瞬にして離れていく.この民意を得られないと統治機構は変えられない.」

つまりこの『ふわっとした民意』の支持さえあれば,政治家はスーパーパワーを手に入れられるのであり,だからこそ『ふわっとした民意』の支持を取り付けることが必要なのだと橋下氏は主張しているのである.これはすなわち,最大の権力者たる『ふわっとした民意』に気に入られるために必死で「媚び」を売る事が,政治において何よりも大切なのだと言っているに等しい.

もしもこの『ふわっとした民意』が国益を増進させるのなら,こうした態度は実に正当なものと言えよう.しかしそんな事は断じてあり得ない.

そもそもそれは『ふわっとした』民意なのであり,そんな「ふわっとした」ものなぞに理性的な判断といったものが宿るはずがない.それは定義上,中身など何もない「イメージ」にしか過ぎないからである.

そんな言葉を口にする橋下氏が,その「ふわっとした民意」を得るためにどうしても欲しかったのが石原慎太郎という「キャラ」であったに違いない.なぜなら石原氏は,橋下氏が持っていない「関東での人気」や「政治経験や年齢を重視する階層の中での人気」をたっぷりと持つ存在だからだ.

無論それは石原氏とても同じだったのだろう.

そうである以上,彼等が合流するための「大同」というものは,「ふわっとした人気を得る」というその一点なのであり,彼等がそのために捨て去った「小異」とは「国益増進のための政策方針」であったと解釈せざるを得ないだろう.
だとするならこれほど国民をバカにした話はない.そもそも選挙とはAKB総選挙の様な人気投票であっては断じてならないものだ.日本の国益に叶う候補者,政党とは何かという「一点」のみを見据え,「ふわっと」とは似ても似つかぬ「ずっしり」とした「民意」でもって,厳粛に政権を選ぶべき行為が国政選挙というものなのだ.この当たり前の一点を,一人でも多くの日本人が思い起こされんことを心から祈念したい.

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