設立趣旨


東日本大震災やリーマンショックによる経済危機を経験した今、わたしたちの社会に最も求められているものは、巨大自然災害や世界的経済金融危機などの様々な「危機」に対する「レジリエンス」(resilience、強靱さ)を如何にして確保するのか、という一点である。この「レジリエンス」とは、社会を一個の有機体と見なした時に、その有機体が如何なる危機に直面しても維持し続けられる、弾力性ある「しなやかさ」を言うものである。すなわち、様々な外力が加わっても、致命傷を受けることなく、被害を最小化し、迅速な回復を果たす、その社会の力こそが、レジリエンスである。この力なくして我が国は、首都直下型地震や東海・南海・東南海地震、富士山の噴火、あるいは、新たな世界恐慌やパンデミック、各種のテロ攻撃を被った時に、その存続そのものが危ぶまれる事態となってしまう。

こうした認識から、2011年度からの五か年、「レジリエンス研究ユニット」を設置し、多面的な研究を推進してきた。そしてその研究成果として、シンポジウム開催、学術論文、書籍(和書・洋書)のみならず、それを踏まえた政策提言によって内閣にレジリエンスに関する推進室と大臣が設置されると同時に、国会ではそれを推進する基本法が設置されるなど、学術的な成果を中心として様々な実務的成果がもたらされた。

ただし、レジリエンスの普及推進という次元においては、未だ様々な課題が残されており、学からの政府・自治体支援、産学連携の推進など、基礎研究から、実践を軸とした実務的展開研究が重要な局面を迎えている。

ついては、これまでの五か年のレジリエンス「研究」ユニットの成果を、より国政と地方政府、国家全体と地域社会、行政と社会といったあらゆる領域に敷衍するための「レジリエンス『実践』ユニット」をここに設置する次第である。

なお、こうした実践研究の展開にあたっては、防災インフラというハードな側面を考える工学的要素と、レジリエンスある社会のあり方を考える人文社会科学的要素の融合が不可欠である。ついては、ハード的側面を検討してきた工学研究科と、文理融合研究を進めてきた人間・環境学研究科との連携を図る。そして、防災研究を推進してきた防災研究所との連携は、レジリエンスの実践的展開において必要不可欠である。

本研究ユニットは、巨大地震や世界恐慌などの様々な危機をも乗り越えうる「強靱な社会」をつくりあげるための基礎研究を踏まえ、実際にそうした「強靭な社会」を作り上げる実践研究を執り行うものである。